ドジャース初連覇。熱狂のWシリーズ【二宮清純 スポーツの嵐】

MVP山本由伸は敵地で3勝
ドジャースが21世紀初、球団史上初の連覇を達成したワールドシリーズは、MLB史上に刻まれる名勝負となった。
MVPは文句なしで山本由伸。強打のブルージェイズ相手に第2戦で完投勝ち、2勝3敗と王手をかけられた第6戦でも6回を投げ勝利投手に。そして雌雄を決する第7戦。4対4と同点の9回1死一、二塁、サヨナラのランナーを背負ってマウンドに上がり、味方の好守にも支えられて、絶体絶命のピンチをしのぎ切った。
延長11回裏にも、あわや同点、サヨナラ負けのピンチを招きながら、沈着冷静な投球でタイトロープを渡り切った。
ちなみに、ワールドシリーズにおいて敵地で3勝をあげたピッチャーは、MLB史上初。先輩の大谷翔平は「彼が世界一の投手だと思っているし、チームもそう思っている。(MVPに対し)異論はないんじゃないかな」と語った。
全米、いや日本国内もが熱狂の渦と化したMLBのポストシーズンゲーム(PSG)は、ア・ナ両リーグの東・中・西地区優勝の6チーム、地区優勝したチームを除く、勝率上位6チーム(アから3、ナから3)の計12チームによって争われる。
今年のドジャースは、ナ・リーグ西地区を制したものの、ナ・リーグで地区優勝を果たした3チームの中で、最も勝率が低かったため、最初の関門であるワイルドカードシリーズからの出場を余儀なくされた。レッズに2連勝し、次のディビジョンシリーズにコマを進めた。
相手は東地区優勝のフィリーズ。3勝1敗で勝ち上がり、ブルワーズとのリーグチャンピオンシップシリーズへ。第4戦で投げては6回無失点、打っては3ホームランと大車輪の活躍をした大谷が、同シリーズのMVPに輝いた。
そして迎えたブルージェイズとのワールドシリーズでも、大谷のバットが火を吹いた。延長18回にもつれこんだ第3戦、大谷は9回も打席に立ち、2本塁打、2二塁打、5四球(うち敬遠が4)。1試合9出塁は、もちろんPSG史上最多だった。
MLBは、言うまでもなく世界最高峰の野球リーグである。そのMLBで大谷は、子どもの中におとながひとり混じっているような活躍を見せた。「地球上で最高の選手」とのドジャース、デーブ・ロバーツ監督の大谷評は、少しも誇張に聞こえなかった。
NHK総合が放送した第6戦の平均視聴率は20・7%(関東地区)を記録した。
今、日本国民に最も支持されている球団は、巨人でも阪神でもなくドジャースかもしれない。
初出=週刊漫画ゴラク11月28日発売号







