13:会話の場面|何回も時間を聞かれるとき
○エピソード
父は毎日、何回も何回も不安そうに「今は何時?」と聞いてきます。数回なら答えますが、その回数があまりに頻繁で、家族はまいってしまいます。
【対応1】「〇時〇分だよ。何か予定があるの?」と聞き返し、理由を探る
時間を答えるだけでは、本人の「気がかりなこと」「したいこと」がいつまでも見えてきません。時間を気にしているのは「何かが不安」だからということがほとんどなのです。
なぜ、本人が時間を気にしているのかを確認しましょう。時間を気にしている理由がわかれば、対応方法も変わってきます。本人の不安が解消されれば、時間を気にしなくてよくなるかもしれません。
【対応2】本人の身近なところに大きくて見やすい時計を置く
頻繁に時間を聞かれないように、家族は本人の近くに時計を置いているかもしれません。しかし、それは本人の目に入らず、理解できていない可能性があります。次のポイントを再確認してみましょう。
①時計を本人がよく見えるところに置く
認知症のある人は視野が狭くなっていて、注意が向かない位置に置くと認識できないことがあります。正面の確認しやすい位置に置きましょう。
②時刻の表示が大きな時計を選ぶ
文字が大きく、見やすい表示の物にしましょう。
③本人の理解しやすい時計を選ぶ
アナログ時計は、文字や長針・短針のしくみがうまく理解できなくなり、難しく感じる人もいます。数字で示してあるデジタル時計の方がわかりやすい場合もあります。その人に合った時計を準備しましょう。
【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
【書誌情報】
『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』
著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
認知症は、理解しにくい言動を引き起こす脳の病気です。家族が「どう言葉をかけたらいいんだろう」「どう接したらいいのかな」「とてもつらい」と感じることが多いでしょう。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」では、介護現場の専門家が日々の接し方や対応のヒントを提供し、プロの視点と方法で、家庭での介護が少しでもラクになるように、ご本人とともにかけがえのない日々を過ごしてほしいという願いが込められています。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」を活用して、実践してほしいと思います。今後のためにも読んでおきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.07.30
