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平安貴族が豊かな財力を使って寺を建てたり仏像を作っていた理由とは?

確実に極楽往生する方法を知らなかったから

平安末期に成立した歴史書『扶桑略記』の1052(永承7)年正月6日の条には、「今年より末法に入る」という記述があります。末法は仏教の歴史観に基づく言葉です。釈迦の死後、しばらくは教えが守られ、悟りを得る者も出ますが、やがて修行をしても悟りを得られなくなり、ついには修行をする者もいなくなり、ただ教えのみが残る時代が訪れます。この3期を正法・像
法・末法というのです。末法の世になると、人の質も悪くなるので犯罪が増え、災害が頻発すると恐れられていました。貴族たちが末法を恐れたのは災厄が己の身に及ぶことへの恐怖に加えて、来世で地獄に落ちることへの不安がありました。

貴族たちは豊かな財力を使って寺院を建てたり、仏像を造ったりしてせっせと功徳を積みましたが、形骸化した教えだけが残る末法の世では、どれほどのご利益が期待できるのか怪しいものです。貴族たちは釈迦の次に仏になるとされる弥勒菩薩が修行している兜率天や、阿弥陀如来が連れていってくれるという極楽浄土に往生することを願いましたが、これをやれば確実というものはありませんので不安は増すばかりでした。

そのように自力で往生しようとするのではなく、すべての人を救おうと誓った阿弥陀如来の慈悲心にすがり、その名を唱える称名念仏〈*〉によって極楽往生を確かなものにするという念仏信仰は、すでに平安中期の空也が唱えていましたが、広まるのは法然以降のことです。平安貴族たちも、こうした確実に極楽往生する方法を知っていたら、末法を恐れずにすんだでしょう。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』
監修: 渋谷申博

イラストや図解を交えた61項目。はじめての人でも仏教の知識や教え、日本の文化がよくわかるエンターテインメント雑学本です。大人の学び直しにおススメ!  「お寺はもともと雨宿りする場所だった」「仏教教団が大きくなったのは、釈迦がシティボーイだったから」「お坊さんの袈裟は、もとはゴミ捨て場の布だった」など、驚きのエピソードや初耳学が満載。仏教って、こんなに楽しい!