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いい意味で予想を大きく裏切られた!ポーランドに日本男子バレーが互角に渡り合ったレセプションアタック【東京オリンピック】

一歩も引かないポーランド戦!

【河野裕輔のエール!第5回】第4戦ポーランド戦振り返り

元日本代表でJTサンダーズでも活躍した河野裕輔さんのコラム。第5回は東京オリンピック第4戦のポーランド戦についてをお届けします。


◆いい意味で予想を大きく裏切られた試合内容
7月30日、今日の相手は世界ランク2位のポーランド。間違いなく今大会でもメダル候補だ。そんなポーランドとの対戦は0-3でのストレート負けであったがその内容はいい意味で個人的予想とは大きくかけ離れていたものであった。大変失礼な物言いだがもっとサーブで殴られてしまうのではないか、スパイクが全く通らないのでは?といったような予測を立てていた。今日の試合において私の大変失礼な予想は大きく裏切られ、世界トップクラスのチームに対し一歩も引かずに戦う選手たちがいた。

◆日本は一歩も引かない!互角に渡り合ったレセプションアタック
今日の試合において、互角に渡り合えた一番の要因はレセプションアタックの得点率が高かったことだ。とにかく連続失点する場面が少なかった。これは本当に日本が世界と渡り合える土台になる技術であり、非常にうまくいっている部分ではないか。そこから展開していく4枚攻撃は先日戦ったイタリアでも、今日のポーランドでも十分戦えるものであった。クビアクこそ出場しなかったものの日本でも昨シーズン活躍したクレクや世界最高峰レベルのサーブを打ってくるレオン擁するポーランドに対し、あれだけのサイドアウトを取れたことは本当に素晴らしいことだと思う。

そして「いい状態」が作れた時の4枚攻撃はどの国にも通用することが証明された。日本のBickはポーランドと比較して半テンポ遅いがスロットをずらすことによりブロックの分散に成功していた。ただスロットが近い場所でのBickはリードブロックで対応されていたため打つコースに注意が必要であった。

Cパスになった場合もハイセットからリバウンドを取ってもう一度攻めなおす。よくレセプションが乱れると陥りやすい単調なバレーの気配は全くなかったことは賞賛に値すると思う。


◆やはりポーランドはスゴかった!苦戦したトランジションアタック
ポーランドのレセプションアタックを見て、素直に「綺麗だな」と感じた。4人が助走するタイミング、セットのスピード、打つコース、すべてにおいて素晴らしいクオリティであった。どう素晴らしいのかといえば、「トータルディフェンスに対応した」攻撃なのだ。

例えばMBのビエニエクの31(Bクイック)だが、ターン(体の左側)に打つケースをよく目にした。これは助走時に日本のMBがコート中央にいるため自身の左側が開きやすいという事であろう。そしてサイド攻撃もファーストテンポ(MBと同じタイミングで助走してくる)で、日本ブロック陣はややスプレッドシフト気味(3人が離れた状況)になりがちであったため、ビエニエクの左側へのスパイクに日本は対応できていなかったように思う。そうやってじわじわとトータルディフェンスのシステムを崩しにかかるポーランドの攻撃は見ていてとても美しいものであった。


さらにトランジションはなかなか「いい状態」が作りにくい。そうなるとハイセット勝負になることからブロックが2枚、3枚とそろってしまう。今日の試合においてはある程度の被ブロックは覚悟の上であるが(大半が2m)、トランジションアタックの打ち方において、石川の多彩さは何度も見返した。

西田のパワー、スイングの速さはあの大きなブロックでも100%のブロックでなければシャットアウトできない様なボールであったし高橋、高梨のラインショットは学生には是非真似してほしい。


◆システムにはまらないシチュエーションを救うスキル
強豪国どこを相手にしてもそうだが相手の「いい状態」の場合4枚攻撃のうちサイド攻撃がブロックの上を抜けてくるケースがある。当然ブロックの後ろにボールが飛んでくるためトータルディフェンスのシステムからは外れてしまう。このシステムにはまらないシチュエーションの時にどうボールをつなぐことができるかというのは個人のスキルに大きく関係してくる。

バレーボールのゲームにおいてはこのシステムにはまらないシチュエーションが少ない方が優位であるが、その優位性を覆すことができるのは個人スキルしかない。今日もL山本を中心にボールをひっかけ、トランジションを取ることでブレイクにつながったケースは少なくなかった。できればない方がいいシチュエーションだが格上との試合での勝利には必要になってくるスキルであろう。


◆総括して
今日の試合はレセプションアタックが高確率で決まったことによるシーソーゲームの様相を呈した。格上に勝つには今日のようにサイドアウトを繰り返し少ないブレイクチャンスをものにしないと難しい。

ブレイクするために重要なファクターとしてのサーブ戦術。石川、西田のビッグサーブがいつも走るとは限らない。そうなった時のためにレセプションアタックで「我慢」してじっくりとチャンスを待つ事が出来ていた。

日本はレセプションアタックについてはかなり世界に近づいている状態ではないか。あとはどうブレイクしていくか。ここがカギになる。次戦のイラン戦、是非トランジションからのブレイクに注目したい。ベスト8をかけた予選最終戦。5年間の集大成を是非見せてほしい。龍神NIPPONが目標を達成できるよう私も力一杯エールをおくります。

河野 裕輔 プロフィール

河野 裕輔(かわの ゆうすけ)

1975年8月1日生まれ ポジション OP.OH 古河4ますらおクラブ-古河2中-足利工大附高(現足利大附高)-中央大学-JTサンダーズ(現JTサンダーズ広島) 現在社業の傍ら、V.TVにて解説者、オーカバレーボールスクール埼玉校にてコーチ業を勉強中。

文責:河野裕輔

写真:FIVB

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