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イラン戦勝利で29年ぶりの決勝T進出決め、日本バレーが進むべき道が示された!【東京オリンピック】

龍神NIPPON 5年間の集大成。確かに聞こえた龍神の咆哮

【河野裕輔のエール!第6回】第5戦イラン戦振り返り

元日本代表でJTサンダーズでも活躍した河野裕輔さんによるコラムです。男子代表が見事29年ぶりに決勝進出を決めたイラン戦の振り返り。


◆大勝負のイラン戦!勝つのはどっちだ!?
8月1日 2020東京オリンピック予選ラウンド最終戦。相手はアジア最強であり世界の強豪国の一角を占めるイラン。これに勝てば日本は29年ぶりの決勝トーナメント出場が決定する状況であった。

結果は嬉しい3-2のフルセット勝ち。選手、スタッフだけでなく今までバレーボールに関わってきた全ての人にとって「大きな」勝利となった。

これから日本バレーが進むべき道が示されたと言っても過言ではないこの試合を振り返っていく。

◆我慢と勝負の繰り返し
試合は予想通り大接戦となったが第一セット、龍神NIPPONのスタートは今までやってきた事を浮き足立つ事なく忠実に遂行する選手たちがいた。レセプションアタック(サーブレシーブからの攻撃)においてはポーランド戦を彷彿とさせる素晴らしいファーストタッチから繰り広げられる4枚攻撃。これにより「負けにくいバレー」の土台ができた。

そして西田有志選手のサーブから始まるようローテを回した日本。「まずサーブで殴る」という中垣内祐一監督のメッセージが明確に伝わってきた。

我慢してレセプションアタックを凌ぎ、サーブで殴ってトランジション(スパイクレシーブからの攻撃で)優位に。まさに龍神NIPPONがやろうとしてきたことではないか。

しかし、イランも素晴らしいレセプションアタックからしっかりと4枚揃えた攻撃を仕掛ける。ここまでは予想通り。

レセプションアタックを確実に取ってくる日本に対し、フラストレーションが溜まる展開のイラン。序盤からややナーバスになっているように見えた。その為イランらしくないミスが出ていたようにも思う。

こうして序盤の殴り合いを制した日本。ギリギリの勝負であったが、上位とのゲームで勝利するお手本のような展開であった。

◆やはりイランは強し!イランの「脳」マルーフ
試合をご覧頂いたみなさんは、背番号4のセッターが記憶にあるだろうか? 彼こそイランの「脳」マルーフ35歳。世界のベストセッターの1人だ。正確なセットだけではない、「得点するためのベスト」を理解しているセッターであり、かつてイタリアセリエAで日本の石川祐希にセットを上げたセッターでもある。セット、ツーアタック、戦術眼全てにおいて一流であり、彼の思惑を崩さねば勝利はないと思っていた。

彼の思惑通りにいかなかった要因は日本のトータルディフェンスとシステム外スキルでのディフェンス、すなわちブロックとディグ(スパイクレシーブ)だ。序盤から「イランのスパイクをちょっとでも引っ掛ける」「簡単にボールが落ちない」状況を作ったことにより、彼のゲームプランが少しずつブレて来たのだろう。

途中出場のセッター、カリミも素晴らしいプレーであったし、イランの攻撃はさすが世界の強豪国!と思えるほどにスピード、パワー、規律において非常に見ごたえのあるものであった。

◆自分の責務を全うすること
セットカウント1-2で迎えた第4セット。ここに龍神NIPPONの底力が詰まっていた。通常であれば浮き足立つシチュエーションだが選手、スタッフ全員が「やるべきことをやる」に全集中していた。このメンタルは「勝者のメンタル」に通じるものがあり、自分たちがやってきたことに対し少しでも疑問があると決してたどり着けない。そこに辿り着いた龍神は十分に勝者になる資格があるだろう。


◆龍神の咆哮
今迄やって来たことを全てコートに置いてくる。中垣内監督のメッセージは第5セットにも現れた。

石川のサーブから始まるようローテーションを回し、最後までサーブで殴り続ける意思表示。それは石川主将の連続サービスエースという結果に現れた。第5セットは15点の短期決戦。ミスは命取りになる。しかし受け身になった瞬間、負けているのだ。

龍神達は最後まで己の責務を全うした。その集大成が15点目だ。石川中心のセットだった第5セット。セッターの関田が選択したのはOP西田であった。

誰もが石川で勝負するであろうと思っていたラストポイント、当然イランもそう思っていたであろう。その1点の為に誰かに任せるのではなく、全員が助走に入っていたことが、山本智大はすぐさまブロックフォローに入っていたことがイランに迷いをもたらした。そしてセットが上がったライトにはイランのMBが遅れ、1.5枚のブロックになっていた。

そして予選ラウンド最後の「龍神の咆哮」が轟いた。

◆総括して
日本男子バレーの目覚ましい活躍の要因として、「世界の流れに乗るためにやるべきこと」が明確化されていたことが大きいと考える。これが出来たら世界と戦えるといえる戦術が明確になり、その為に必要なスキル、タスクが明らかになることにより、指導者と選手のやるべきことが共通認識となっている。あとはそのスキルをどれだけ磨いていくか、タスクを円滑に処理するかの話になる為、試合中の脳内が整理されているといえよう。

5年間の集大成を見せてくれた龍神NIPPON。次の冒険は決勝ラウンド、相手はブラジルだ。世界最高峰の技術を目の当たりにするであろうが受け身になることなく、勇気を持って突き進んで欲しい。勿論我々ファンも一緒に戦おう。

河野 裕輔 プロフィール

河野 裕輔(かわの ゆうすけ)

1975年8月1日生まれ ポジション OP.OH 古河4ますらおクラブ-古河2中-足利工大附高(現足利大附高)-中央大学-JTサンダーズ(現JTサンダーズ広島) 現在社業の傍ら、V.TVにて解説者、オーカバレーボールスクール埼玉校にてコーチ業を勉強中。

文責:河野裕輔

写真:FIVB

情報提供『バレーボールマガジン』
バレーボール観戦の感動や面白さ、そして選手の思いを一人でも多くのファンに伝えたい――。

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