火葬場への移動と納めの式
火葬場への移動
昔は、火葬場には遺族や親族のほか親しかった友人なども同行していましたが、現在は近親者のみで移動するのが一般的です。
移動時は、霊柩車の後ろに喪主と宗教者などが乗るハイヤー、遺族や親族が乗るマイクロバスが続きます。
希望すれば、故人ゆかりの場所を経由することもできますが、車両料金は距離でも換算されますし、火葬場の予約時間もあるので、葬儀社と相談してみましょう。
火葬までの流れ
火葬場に到着したら炉前に棺を安置して、納めの式を行います。遺体が荼毘に付されている間は、遺族は控え室で待機します。
- 火葬場へ移動
到着したら、全員で棺とともに炉前に移動。 - 納めの式
焼香台で、僧侶の読経と共に順を追って全員が焼香。 - 火葬
棺が炉に入ったら控え室で同行者をもてなす。 - 控え室で待機
収骨の案内が流れるまで、待機する。 - 収骨
炉前で係員の指示に従い、収骨する(⇒P75)。
出発前にしておくこと
火葬場に行かずに残る親族に、遺骨を迎える場所で、遺骨迎えや精進落としの準備をしてもらいます。
霊柩車やマイクロバスの運転手、そして火葬場職員(民間火葬場の場合)への心づけについても、事前の打ち合わせ通りに葬儀社が対応してくれます。
移動時の車中の席次
僧侶が同行する場合は、運転手の後ろの上座に座ってもらいます。その隣に喪主、遺族は運転手の隣に座ります。僧侶が自家用車で来る場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
死体火葬許可証
死体火葬許可証は当日忘れずに持参します。許可証がないと火葬できないため、事前に葬儀社に渡しておくと安心です。
火葬が済むと死体火葬許可証は「死体埋葬許可証」となり、骨壺の入った箱に入れて渡されます。埋葬の際に必要な書類なので、渡されたらかならず中身を確認しましょう。
死体埋葬許可証は紛失すると手続きに時間がかかるので、骨壺の箱に入れたままで保管しましょう。死体埋葬許可証は5年間の保管義務があります。
火葬と納めの式
火葬場に到着したら、棺とともに喪主を先頭に火葬炉の前まで進みます。炉前の焼香台に集まり、故人の遺体と最期のお別れをします。僧侶が同行している場合は「納めの式」を行い、遺体を茶毘に付します。
火葬に要する時間は40分~2時間で、事前に葬儀社が予約をしておいた控え室を利用して待機します。待機中は茶菓で僧侶や同行者をもてなします。
時間帯によっては軽食を取るなど、待機時間に応じた手配ができるよう葬儀社に確認しておきましょう。
火葬後は炉前に戻り、係員の指示に従って「収骨」を行い、遺骨を骨壺に納めます。
納めの式(仏式)
炉前に設置されている仮祭壇に位牌と遺影を置きます。香炉や燭台は火葬場で用意してあります。僧侶の読経の後に喪主、遺族、親族の順に焼香していきます。納めの式が終了したら、合掌して棺を見送りましょう。
神式
神式では炉前で「火葬祭」を行います。白本の小案(小机)に位牌、遺影のほかに神饌、銘旗などを置きます。斎主が祭詞を奏上し、裳主から順に玉串奉奠を行います。
キリスト教式
キリスト教式の場合は、神父(牧師)と一緒に聖歌(賛美歌)斉唱、聖書の朗読などを行い、祈りを捧げることが多いようです。
収骨(骨上げ)
火葬後に遺骨を骨壺に入れることを「収骨」といいます。これは日本独特の儀礼で、この世からあの世へ向かう故人に三途の川の渡しをしてあげるという意味があります。
収骨は、喪主から血縁が近い順に行います。2人1組になって、1片のお骨を竹の箸で一緒に挟んで骨壺に納めます。
また、「故人の宗派の総本山に納めたい」「菩提寺が遠いので近くに設けた墓に納めたい」「手元供養をしたい」などの理由で、分骨の希望がある場合は、分骨用の骨壺と錦袋を事前に葬儀社に依頼しておけば、収骨の際に係員が用意してくれます。
火葬場から帰宅する際の注意点
収骨を済ませると、係員が桐の箱に骨壺を入れて、白布で包んで渡してくれます。死体埋葬許可証も渡されるので、確認が済んだら、桐箱に入れて持ち帰ります。
帰宅する際、基本的には喪主が遺骨を、遺族が位牌と遺影を持ちます。
タクシーで帰宅する場合はそのまま隠さず乗車することも多いようですが、公共の乗物で移動する場合は、見た目にわからないようにするのがマナーです。
自身で用意したバッグに入れるか、火葬場の売店で、遺骨を納める専用のバッグが購入できることもあるので、利用するとよいでしょう。
【書籍情報】
『増補改訂版 身内が亡くなった時の手続きハンドブック』
著:奥田 周年
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公開日:2024.09.20