臨終に備える
臨終に備えて用意するもの
病院で亡くなった場合、看護師が浴衣に着替えさせることが多いので、事前に家族が浴衣を用意します。のちの納棺の際に、浴衣で棺に納めるか、故人の愛用の衣服に着替えさせるかは、家族の意向に沿う形になります。
退院する際には、入院費用のほかに、遺体搬送のための寝台車料金、運転手への心づけなどの出費が見込まれるため、あらかじめ現金を用意しておきましょう。
臨終の前に連絡しておくところ
深く信仰している宗教がある場合は、病状悪化の時点で宗教者に連絡を取ったほうがよいでしょう。キリスト教は、危篤の際には特有の儀式があり、意識があるうちに執り行うことが大切ですので病状が悪化した場合は、所属する教会に連絡を。
葬儀社が決まっている場合は事前に連絡しておけば、臨終後の連絡がスムーズにいき、今後の行動の手順などをアドバイスしてくれます。
事前に家族で考えること
臨終後は気持ちが揺れ動き、時間的にも弔問の対応に追われることが多くなります。そのため葬儀の内容について、じっくり検討することは難しくなります。
昔は「亡くなる前に葬儀のことを考えるのは縁起が悪い」といわれていました。しかし近年は「納得できるお葬式のためには準備が必要」と考え、 「最初はどこに遺体を運ぶか」 「どういった葬儀にするか」 「予算はどの程度か」を家族内でまとめて葬儀社に相談することも珍しくありません。準備不足のままお葬式を迎えることになると、葬儀社ペースで物事を決められてしまいます。
臨終に備えた現金の用意
臨終直後は現金での支払いが多くなります。入院費以外に、トータルでどのくらいかかるかを想定しておきましょう。
入院費以外で必要となる費用
●医療関係者へのお礼(菓子類など。受け取らない場合もある。⇨P32)
●遺体の搬送代(搬送のみを依頼する場合)
●寝台車の運転手への心づけ
●駆けつけた人への飲食代
故人名義の預貯金の引き出しの注意点
金融機関は名義人の死亡を確認した時点で口座を遺産として凍結してしまうため、家族でも引き出すことができなくなります。凍結される前に現金を引き出したほうがよいという人もいますが、のちに相続人の間でもめごとになる可能性もあるため、細心の注意が必要です(⇨P116)。
事前に決めておきたい7つのポイント
1 喪 主
喪主は葬儀の主催者で、一般的には故人の配偶者か子どもが務めます。葬儀だけではなく、その後の法要も喪主となった人が主催することが多いので、よく話し合ってから決めましょう。喪主が高齢や未成年の場合は、葬儀の運営の責任や金銭的な負担をする「施主」を別に立てることもあります。
2 宗教・宗派の確認
菩提寺(⇨P39)がなく、無宗教でやりたいという要望もなければ、特定の宗教宗派の形式でお葬式を執り行うことも可能。葬儀社に僧侶を紹介してもらうこともできます。
■ 仏式・・・おもな宗派に浄土真宗、真言宗、曹洞宗、浄土宗など。
■ 神式・・・信仰の対象となる祭神が無数にあるため、氏子になっている神社か、現在住んでいる地域で縁のある神社に依頼する。
■ キリスト教式・・・危篤の際の祈りやお葬式は所属している教会にお願いする。おもにカトリックとプロテスタントに分かれる。
3 形 式
菩提寺がある場合は仏式の葬儀になりますが、菩提寺がない場合は、ある程度自由に形式を決めることができます(⇨P26)。
4 予 算
日本のお葬式の費用は海外に比べて高めという結果が出ています。全国平均にすると約160万円にもなります。親のために立派なお葬式をあげたいという気持ちも大事ですが、許容される範囲内で予算を決めておくことも必要です。
5 規 模
会葬者が多く見込まれる場合は、式場の規模も大きくなり、祭壇や設営費用も高くなります。あまりに狭い会場では会葬者や周辺に迷惑をかけることもあるので、適切な規模を考える必要があります。
6 搬送先の決定
搬送先が自宅の場合は、お葬式の依頼の際に葬儀社に伝えます。搬送先が自宅であれば、遺族が見守る中で納棺できます。火葬場併設の冷蔵保管室や民間の遺体保管施設などを利用する場合は保管料がかかるのと、対面が自由にならない場合があります。
7 式場選び
自宅以外の式場として、火葬場併設の総合斎場、自治体が運営する公的施設、寺院などの貸し式場、葬儀社経営の斎場などがあります。
[式場ごとの特徴]
● 斎場・総合斎場・・・斎場は葬儀専用の式場。最近は火葬場を併設する総合斎場が増えてきている。地方では公営の斎場が多いが、都市部では民営の総合斎場が主流になりつつある。東京都内では、行政区ごとにお葬式ができる施設があり、利用率が高い。
● 自宅・・・自宅の場合は、近親者で済ませるお葬式が圧倒的に多い。看板や忌中札などは出さず、弔いの雰囲気は周囲にあらわさない。
● 宗教施設・・・寺院が経営する貸し式場の多くは、宗派を問わず利用可。神道は自宅や斎場、キリスト教はおもに所属する教会で行う。
【出典】『増補改訂版 身内が亡くなった時の手続きハンドブック』著:奥田 周年
【書籍情報】
『増補改訂版 身内が亡くなった時の手続きハンドブック』
著:奥田 周年
身内が亡くなった場合、悲しむ間もなく遺族として葬儀や相続などさまざまな手続きをこなさなければなりません。本書『増補改訂版 身内が亡くなった時の手続きハンドブック』は、危篤の対応から相続する場合に心得ておきたい知識まで、事例や図解を交えながらわかりやすく解説しています。将来に向けて事前に準備をしておきたい方だけでなく、すでに相続が発生していて不安を抱えている方も、流れをイメージしながら必要な手続きについて知ることができる1冊です。
公開日:2024.09.02