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前庭覚と触感覚のつまづきへのアプローチ方法!慣れるより安心できる対応を心がけてみよう【発達が気になる子の感覚統合遊び】

Text:藤原里美

理論4:6つのつまずきに対するアプローチ②

○理論解説のポイント!

  • 過敏は慣れさせるより安心させる
  • 感覚探求型は感覚を堪能させる
  • 運動企画・両側統合・抗重力運動・スモールステップの支援

【知識・学習】前庭覚のつまずきにアプローチ

感覚が鈍感な場合、スピードや揺れ、回転を感じたくなるため、よく動きます。目が回らない子もいて、大人がびっくりするくらい長い間くるくる回っても平気です。動くことは必要な感覚欲求なのでまずはそれを保障し、その後で静かな遊びに集中させます。

この緩急のつけ方が大切です。好きな遊びは、パズルや粘土、スライム、ブロックなど座って遊べるものなら何でも OK。くるくる回るものを見るのが好きな子も多いので、手で回せるコマ、吹いて回す「吹きゴマ」も便利です。以前流行した「ハンドスピナー」もおすすめ。子どもがはまる回るおもちゃを探してみましょう。つまり、「動きたい」という欲求を、「見て楽しみたい」という感覚欲求に変換する作戦なのです。

【知識・学習】前庭覚のつまずきにアプローチ【発達が気になる子の感覚統合遊び】

前庭覚と関連が深い見る力(視知覚)

私たちは視覚によって、頭がまっすぐになっていることを確認しながらバランス感覚を調整していると説明しましたが、視覚と前庭覚はチームとして機能しています。このときに使う視覚機能を「視知覚」と呼びます。視知覚は、ものの形を理解したり、距離感を把握したり、動くものを目で追ったり、たくさんのものから必要なものを探したりする仕事もしています。視知覚機能は、「情報を取り込む」「情報を整理整頓する」「体を動かす」の3つの仕事をしています。

①情報を取り込む仕事

情報を取り込む仕事とは、ものを見るときに対象物との距離に合わせてピントを調節する機能と、眼球を適切に動かして対象物を捉える機能です。

私たちは、文字を読むとき、必要なものを探すときなどに眼球だけを動かして対象を捉えていきます。また、黒板の文字を手元のノートに写すときなどは、左右の眼球が対象物までの距離により、適切に寄ったり離れたりして文字の形を捉え、ノートをとっていきます。

この眼球の動きは、跳躍性眼球運動(左右を見比べて違いを見つけたり、たくさんの中から必要なものを探したりするときの動き)、追従性眼球運動(文字を読んだり、ボールの行方を追ったりするときの動き)、左右の目のチームワーク(両眼視機能)の3つがあります。この眼球運動は年長さん(5~6歳)で上手に使えるようになるといわれています。

②情報を整理整頓する仕事

①の仕事によって対象を目で捉え、その情報が視神経を通って脳に送られます。その情報から見たものは何かを認識する働きが情報を整理整頓する仕事で、これを「視空間認知」といいます。

視空間認知には、対象物の動き、自分との距離感、周りのものとの位置関係を認識する「空間認知」と、対象物がどんな形で、それ自体がなんであるかを理解する「形態認知」があります。見たものを把握したり理解したりするには、さまざまな点や線、色などの情報を統合していく力も必要です。

③体を動かす仕事

体を動かす仕事は、①②で得られた情報から、自分の体を状況に応じて適切に動かす働きです。適切に体を動かすには、ボディイメージが大切ですが、これは今まで学んできた五感と二覚を使って、体の傾きや大きさ、力の入れ具合といった自分の体に関する理解が必要になります。

ここでも、すべての感覚と視知覚が統合され、よりスムーズな子どもの動きや、運動が保証されていくことがわかります。

【知識・学習】触感覚のつまずきにアプローチ

触感覚に関連する悩みで多いのが、歯磨き、爪切り、入浴など、衛生状態にかかわる基本的生活習慣を嫌がること。毎日のことなので、大きな困りごとになります。「無理にでもやらないと」と考えて、泣いて嫌がるのを押さえつけて、やりたくなる気持ちもわかります。

でも、この「無理やり慣れさせる」がいちばん避けたい対応なのです。一度嫌な思いをすると、「二度と嫌!」とさらに拒否が強くなった経験はないでしょうか。

特に、首周り、顔、頭、おなかなど、本能的に攻撃されたら困る部分に過敏さは顕著に出るといわれています。

私が以前勤務していた幼児デイケアの調査では、発 達 障害をもつ 4 ~ 5 歳のお子さんが、通常の 4 倍の触覚過敏を抱えているという結果も出たくらい、過敏で困っている子は多いのです。

慣れさせるより、安心できる方法を考える

触覚過敏があると、とにかく不安です。不安になるとさらに過敏は強まります。ですから、「どうしたら安心できるか」を考えます。

たとえば、お風呂を嫌がる子の場合は、好きな入浴剤を使ったり、好きなおもちゃを浮かべたりするなどして、そこが楽しい場所だと感じられるようにしましょう。過敏がひどい場合は、Tシャツを着て、浮袋をして入ることでうまくいった子もいます。慣れるまではただ遊んで出るだけでもかまいません。お湯の温度や、湯船に椅子を置いて、首がしっかり出るようなスタイルをとるのも安心します。頭を洗う際は、シャンプーハットを使い、タオルでしっかり顔を覆ってもよいでしょう。

また、歯磨きをする場合、見えないところを磨くのは怖いもの。鏡で見せながら「ここを 10 回磨くよ」と予告してみましょう。ブラシの柔らかさなども本人に試させるのもよいでしょう。人からされるのが不安なら、自分でやってみるのもよいですね。同様に、髪をとくのも、三面鏡を使って見えるようにして行なってみましょう。

トイレを嫌がる子の場合

子どもがトイレを嫌がる場合は、触覚過敏以外にも、いろいろな要因がからんできます。何が嫌なのか、考えてみます。

  • 便座の冷たさ
  • みんなと一緒だとぶつかりそうで怖い
  • におい
  • 不定期に水が流れる音
  • スリッパや上履きに履き替えるのが大変 など

便座の冷たさやぶつかりそうで怖いが原因なら、触覚過敏と考えられます。便座の冷たさは、便座にシートをつけて解決することもあります。みんなと一緒だとぶつかりそうで怖いといった場合は、ほかの子と使用する時間をずらしたり、本人の個室トイレを決めてみたりしましょう。

また、においについて気になるなら嗅覚過敏かもしれません。マスクの着用をすすめたり、本人用にアロマでつくった芳香剤を「シュッ」と使うのもよいでしょう。

水が流れる音が気になる場合は、聴覚過敏かもしれませんので、イヤーマフをしてみましょう。スリッパに履き替えるのが大変な場合は、好きなキャラクターや素材を選べるようにするなど、工夫次第でうまくいくことも多いのです。

「ひとりの子だけ特別にできない……」と考えていると工夫ができません。「どうしたら安心して、楽しくトイレに行けるのか?」を考えてみてください。

【出典】『発達が気になる子の感覚統合遊び』著:藤原里美

【書誌情報】
『発達が気になる子の感覚統合遊び』
著:藤原里美

子どもの困った行動には意味があり、感覚統合の視点から理解すると、これらは感覚情報の処理がうまくいかない結果であることがわかります。感覚統合は「発達凸凹」の子どもたちの支援に重要で、「遊び」を通じて子どもの能力を引き出す方法が強調されています。「発達が気になる子の感覚統合遊び」では、理論編と実践的な遊び編で構成されており、100以上の遊びを紹介しています。遊びを通じて子どもの情動を安定させ、成長を促すことを目的としており、子どもの理解と支援を促し、幸せな未来を共に築くために読んでおきたいおすすめの一冊です。

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