理論3:子どもは遊びで発達させよう①
○理論解説のポイント!
- 子どもは遊びで発達する
- 子どもは1mmも変えない:社会モデル
- 覚醒レベルの理解と支援:交感神経・副交感神経のバランスに注目
【理論解説】「遊んでいたら発達した」が最強
楽しく遊んでいたら、
- 先生のお話が聞けるようになった
- 落ち着いて座れるようになった
- ものにぶつからなくなった
- 手元を見て着替えができるようになった
- 音が怖くなくなった
その結果、先生にたくさんほめられるようになった。子どもはただ楽しく遊んでいるだけなのに、今まで困っていたことが解決し、生活しやすくなる。そうなるのが最強だなと思います。
しかし、ここで心にとめておかなければいけないことは、私たちは子どもの困った行動を解決するために……という視点にばかりとらわれてはいけないということです。
まず大切なのは「楽しく遊ぶこと」です。その結果、子どもの困りごとが少なくなればラッキーという感覚が大切なのです。それくらいおおらかで、寛容な気持ちで、子どもと遊んでみてください。
そして何より、感覚統合遊びは心地よい感覚刺激が入るので、子どもの情緒が安定します。苦手な感覚刺激は避けるので、安心して遊ぶことができます。何かができるようになるより、心理的安全性を高めることが最優先です。
自分がありのまま安心して存在できる実感を、子どもが遊びの中から感じとることができたら、困った行動は確実に減るはずです。
不安・イライラ→(心地よい感覚刺激)→安心
- 情緒が安定する
- 安心して遊べる
【知識・学習】環境を整えて子どもは1mmも変えない
遊びで子どもを発達させるのと併用して、子どもの状態に応じて環境を整えたり、私たちのアプローチを工夫したりすることも重要です。
私は「子どもは1mm も変えない」という考え方を大切にしています。これは、子どもを遊び以外で変えようとすると、ストレスがかかり大人も子どもも疲弊していくことをよく知っているからです。
子どもを変えずに社会を変える。このことを「社会モデル」といいます。たとえば、前述した感覚欲求が強い子には、重りを入れたリュックを背負わせたり、姿勢が保持できない子、座り続けるのがむずかしい子には椅子を工夫したりします。
感覚過敏の強い子は、刺激からエスケープできる場所を用意します。子どもを遊びで発達させることと、社会モデルの併用により、子どもたちの困っている行動はさらに軽減します。
椅子の工夫
【スーパーボール入りの座布団】
座布団の中にスーパーボールを入れて、椅子に敷きます。子どもはスーパーボールのゴツゴツした感触をお尻や太ももから感じることができるので、感覚欲求が満たされて、着席が持続します。
【腰を前傾に保つ】
姿勢が崩れてしまわないように、椅子を工夫して、子どもの背中に突起物やクッションを当ててみましょう。
腰が前傾になれば、姿勢がよくなり、手も動かしやすくなります。
【出典】『発達が気になる子の感覚統合遊び』著:藤原里美
【書誌情報】
『発達が気になる子の感覚統合遊び』
著:藤原里美
子どもの困った行動には意味があり、感覚統合の視点から理解すると、これらは感覚情報の処理がうまくいかない結果であることがわかります。感覚統合は「発達凸凹」の子どもたちの支援に重要で、「遊び」を通じて子どもの能力を引き出す方法が強調されています。「発達が気になる子の感覚統合遊び」では、理論編と実践的な遊び編で構成されており、100以上の遊びを紹介しています。遊びを通じて子どもの情動を安定させ、成長を促すことを目的としており、子どもの理解と支援を促し、幸せな未来を共に築くために読んでおきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.08.05