SPORTS COLUMN
- スポーツの話題を毎日更新 -

  • HOME
  • SPORTS COLUMN
  • APBCで勝ちを呼び込んだ「陰のMVP」!宮西尚生に匹敵するスライダーを持つ根本悠楓/日本ハムファイターズ

APBCで勝ちを呼び込んだ「陰のMVP」!宮西尚生に匹敵するスライダーを持つ根本悠楓/日本ハムファイターズ

Text:小林雄二

アジアプロ野球CSで輝きを放った“北海道純粋培養”の好サウスポー

⚫︎日本ハムファイターズ
根本悠楓(ねもと はるか)

APBCで勝ちを呼び込んだ「陰のMVP」

若き侍ジャパンが連覇を達成したアジアプロ野球チャンピオンシップ(以下、APBC)で、この選手・根本悠楓を知った方も多いのではないだろうか。

まず、初戦の台湾では0ー0の6回に3番手として登板し、2イニングをいずれも三者凡退に切ってとるパーフェクト(3奪三振)ピッチングを披露すると、その後、森下翔太(阪神)の決勝弾で勝利を呼び込んだ。

二度目の登板となった韓国との決勝では2点ビハインドの5回から登板、直球に強い打者がズラリと並ぶ韓国打線を相手に140キロ台中盤の力のあるストレートをビッシ、ビッシと投げ込んで7回までの3イニングで与えた安打はわずかに「1」、4奪三振無失点の快投を披露。悪い流れを食い止めた根本の好投が呼び水となったのか打線も奮起、“根本登板中”に同点に追いつき、延長戦の末の、劇的なサヨナラ勝ち=優勝へとつながっていった。

「2試合とも流れを止めてくれて、ホントに凄かったっす」とは日本ハムの同僚で同大会ベストナインにも輝いた万波中正の談だが、スポーツ紙も“陰のMVP”と評するなど、この大会を機に根本株は一気に上がった。

150キロ超の直球+変化球もまんべんなく使えます

その根本の軸となるのは、まずは最速150キロ超の直球だ。野球評論家の野口寿浩氏の言葉を借りると「打者が狙っていても前に飛ばないストレート」で、特長は「ゆったりとしたフォームとのギャップが、(打者に)より打ちにくく見せている」。そのため、スピードガン表示より速く見えるという。そのうえで内角球のクロスファイアをズバっと決められる勝負度胸と制球力もある。

直球と双璧をなすのがスライダーだ。2022年度まで日本ハムの同僚で、2023年シーズンは対戦相手として対峙した近藤健介(ソフトバンク)いわく、「曲がり幅が大きいうえに、曲がってからが速い」のが特長だ。チームでは兄貴分だった吉田輝星(現・オリックス)も「宮さん(宮西尚生)のスライダーに匹敵する」と太鼓判。くわえて、外角低めにきっちりコントロールできるチェンジアップ、フォーク、カーブもまんべんなく使える。

イメージとしては、間合いやテンポなどで打者と駆け引きをしながら打ち取るオリックスの宮城大弥。それぞれの球質が優れていて、制球力&度胸があるうえに、クレバーなのである。

実は、アマチュア時代の実績も十二分

今回のAPBCでいきなり“全国デビュー”を果たした、全国的には無名の根本なのだが、実は中学時代から実績は十二分。北海道白老郡白老町出身の根本は小1から野球をはじめ、白老町立白翔中学では軟式野球部に所属。

ここでの実績が凄い。3年次に同中は全国中学校軟式野球大会に出場しているのだが、根本はエースとしてチームを牽引し決勝に進出。その決勝では大会史上初となる完全試合を達成し全国制覇を成し遂げているのだ。

その数カ月後に行われた第9回U-15アジア野球選手権大会では代表に選出され、のちに星陵高校から東京ヤクルト入りした内山壮真とバッテリーを組んでここでも優勝に貢献、大会最優秀投手賞にも輝いている。

そうなると当然、多くの強豪校から誘いがあったが、根本は進学先に甲子園出場経験のない地元の苫小牧中央を選んだ。理由はこうだ。

「体験会でいい雰囲気だったことと、地元(出身)の選手が多い高校で勝っていきたいなと思いましたし、祖父母の近くでやりたい気持ちが強かった」(根本)から。甲子園に関しても「どこの高校に行っても必ず(甲子園に)出られるというわけではないですし、自分の練習の取り組み方で甲子園やプロにいけるかが決まる。だから、どれだけ追い込んでやれるかだと思っていました」という。この考え方が“今”ならわかるのだが、当時中3の考えなのだから、驚かされる。

武田勝氏と井端監督との“縁”

根本は運も持っているのかも知れない。前述したU-15日本代表で指導を受けたのが、指導力に定評のある武田勝投手コーチ(元日本ハムファイターズ。現・新潟アルビレックスBC投手コーチ)だったのだ。同コーチからは 「首の使い方やランナーを刺しに行く牽制、刺しに行かない牽制を教わりました」というのだが、その武田氏との縁は続きがあるのだ。

同氏は当時から石川ミリオンスターズでヴァイスプレジデント兼総合コーチ(その後17~19年は監督)を務めていたのだが、20~22年までは日本ハムで投手コーチを経験。つまり、根本が入団したシーズンにプロの世界で“再会”を果たし、ここではチェンジアップを指導してもらい、武器としたのだ。

武田氏だけではない。現侍ジャパン代表の井端弘和監督もまたしかりで、同監督が解説者を務めていた19年のこと、“北海道に好投手がいる”と聞き、プライベートで訪れたのが秋の北海道大会。その“好投手”こそ、「苫小牧中央の根本」だったのである。

「本人が知っているか知らないか、わからないですけど」と同氏はいうが、「根本悠楓」の名前が同監督にインプットされていたことが今回の代表選出につながったのだとすれば、根本はやはり運を持っていると思うのだ。

さてさてその根本。2024年シーズンはプロ入りから数えて4年目の年となる。APBCの活躍から中継ぎ、抑えの適任を指摘する向きもあるが、現在はまだまだ進化の過程。先発として、それこそオリックス宮城のように、強打者居並ぶパ・リーグの打者を翻弄する姿を見てみたいと思うのだが、皆さん、いかがだろう。

芝山ゴルフ倶楽部 視察プレーのご案内