7:言葉の意味も、何と言っていいのかもわからないチンプンカンプンな世界
○エピソード
認知症のある義父に「今日9時に病院に行くから、着替えを準備して」と伝えてもなかなか話が伝わりません。本人は何か言おうとしても「あれ」「これ」「それ」が多く、具体的に何を言いたいのかわからないことが多いです。
【あるある行動】話が伝わらず、言おうとしていることもわからない
脳の「左側頭葉」は、言語の記憶や理解の機能を司ります。そのvが損傷を受けると、言葉を「理解する」「表出する」ことが難しくなります。理解はできても表出できない人もいれば、その逆の人もいます。進行すれば両方とも難しくなっていきます。まずは聴力・耳の検査などをし、話が伝わらない原因が難聴などによるものかどうか見極めましょう。そうでなければ認知症の影響を疑います。
言葉の意味が理解できないと、聞く意欲はあっても相手が何を言っているのかわからず、さらに、わからないことを尋ねようとしても言葉が浮かばないので、質問もできません。
また、認知症の初期には「あれ」「これ」といった指示語が増えてくるという特徴があります。言いたいことの概念は頭にあっても、言葉が想起できないために指示語になっているのです。さらに進行すると、意味がうまく理解できないため、比喩や例えが伝わらなくなる傾向があるといわれています。
このように、話が伝わらないということは、本人にとって一番もどかしいことです。逆に、話がスムーズに伝わり、比喩などでジョークが言えるということは、認知機能が保たれているということ。話せるうちに、具体的で、簡潔な言葉を使いながら、冗談をたくさん話しておきましょう。
○もしあなたがこの世界にいたら?
あなたは言葉が全く通じない国に転勤になりました。しかし入国の際、なぜか拘束され尋問を受けるはめに。言うことがわからず、何を言っても伝わらず、通訳もいなければ、どう感じますか?
【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
【書誌情報】
『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』
著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
認知症は、理解しにくい言動を引き起こす脳の病気です。家族が「どう言葉をかけたらいいんだろう」「どう接したらいいのかな」「とてもつらい」と感じることが多いでしょう。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」では、介護現場の専門家が日々の接し方や対応のヒントを提供し、プロの視点と方法で、家庭での介護が少しでもラクになるように、ご本人とともにかけがえのない日々を過ごしてほしいという願いが込められています。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」を活用して、実践してほしいと思います。今後のためにも読んでおきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.07.08