左打者では被死球数トップ
今季限りで引退を表明した青木宣親選手(東京ヤクルト)の日米通算2725安打(9月19日現在)は、歴代5位だ。
1位=イチロー(4367本)、2位=張本勲(3085本)、3位=野村克也(2901本)、4位=王貞治(2786本)、そして青木と続く。
次に被死球数を見てみよう。1位=清原和博(196個)、2位=青木宣親(日米通算・171個)、3位=竹之内雅史(166個)、4位=衣笠祥雄(161個)、5位=阿部慎之助(152個)。
青木は左打者ではトップだ。171個の内訳はNPBで123個、MLBで48個。日本でも米国でも、ぶつけられ続けた野球人生だった。
右投手の多いプロ野球では、必然的に死球数は右打者の方が多くなる。それは日米共通だ。そんな中、左打者の青木がこれだけぶつけられたのは、懐をえぐるようなボールにも逃げず、果敢に立ち向かっていったからである。
青木がダウンスイングをレベルスイングに変えたのは、プロ入り2年目の2005年だ。この年、セ・リーグのシーズン最多安打記録を更新する202安打をマークした。先輩である古田敦也の「オマエ、何で打てないかわかるか?」というアドバイスがきっかけだった。
青木のフォームは独特だ。どんな球種にも対応できるように重心を後ろ足に置き、低く沈み込むようなフォームで、外角に逃げていくボールに対しても、しぶとく食らいつく。
青木がブレークした頃、あるベテラン投手が「ピラニアみたいにしつこく食いついてくる」と苦々しい表情を浮かべていたが、それこそが彼の真骨頂だろう。
だが、ピラニアの代償は小さくなかった。日本でも米国でも、繰り返し頭にぶつけられた。
ジャイアンツに在籍していた2015年8月、カブスのジェイク・アリエータ投手に右頭部にぶつけられ、その場に倒れ込んだ。その後、脳震盪に悩まされた。
実は、この2ヵ月前のドジャース戦で、青木はフリオ・ウリアス投手から右足首に死球を受け、腓骨を骨折していた。海の向こうでは、文字通り、死球による故障との戦いに明け暮れる日々だった。
直近では、昨年7月26日、広島の栗林良吏投手の154キロのストレートを側頭部に受け昏倒、担架に乗せられ、そのまま病院に運び込まれた。
これだけ死球禍、しかも頭部の損傷が続くと、それがトラウマとなって、打席に立つのが恐ろしくなるものだ。
そんな素振りを微塵も見せなかった青木は、真の意味でのサムライだった。
初出=週刊漫画ゴラク2024年10月4日発売号