山の周りを吹く風が独特な形の雲をつくる
山岳地帯など、地形の凹凸が大きい場所は、風の流れがその影響を強く受けます。その結果、風の流れが上向きになって、空気が上昇して雲ができることがあります。このように、地形の影響を受けてできた雲を総称して「地形性の雲」といいます。そのなかでも山岳地形特有のものを山雲といいます。地形性の雲の多くは山雲です。
風が山にぶつかると、大きく2つの流れが起こります。ひとつは山を迂回するように左右に吹き分けるパターン。そしてもうひとつは、風が山肌に沿って上昇するパターンです。後者のパターンは、風が山を乗り越えるように吹くものです。山肌に沿って昇った風は、山頂に達した後、山肌に沿って吹き降ります。このとき、山頂付近にできるのが笠雲です。
山を乗り越えた風は、ふもとに到達すると、反動でバウンドするように上昇します。ちょうどこの部分は、山を迂回するように左右に吹き分けた風が合流する場所でもあり、風のぶつかり合いと上昇の相乗効果によって吊るし雲(P227)ができます。
山越えの風は、バウンドして吊るし雲をつくった後、さらに風下側に向かって上下方向に何回か振動することがあります。これを山岳波はといいます。山肌に沿って上昇した風は、ときに吹き降りることなく、そのまま山頂をかすめるように吹き抜けていくことがあります。このようなときにできるのが旗雲(P230)です。また、山を乗り越えた風が、風下側で勢いよく跳ね上がって雲をつくることがあります。この跳ね上がりをハイドロリック・ジャンプ(はね水現象)といい、その結果できる雲が「ジャンプ雲」です。ジャンプ雲は、風下側を広く覆って雨を降らせます。
たまったりこぼれたり…水のようにふるまう雲も
山岳地帯では、谷すじや山間盆地などのくぼんだところに、低い雲がたまって見えることがあります。これが雲海です。雲海を見ていると、たくさんできて稜線からあふれ出たり、地形のくぼんだところからこぼれるように流れ出たりと、まるで水のようなふるまいを見せることがあります。このあふれ落ちた雲や流れ出た雲によってできるのが滝雲(P229)です。
出典:『雲の図鑑』著/岩槻秀明
【書誌情報】
『雲の図鑑』
岩槻秀明 著
季節ごとに見られる雲や、気象予報の役に立つ雲など、雲の外観から判別できる雲図鑑に加え光の作用によって見られるレアな雲や、雲ができる過程など科学的なメカニズムまで解説。ポケットに入れていつでも楽しめる雲図鑑なので自粛の際でも公園や河原で子供と遊ぶ時や、外に出られなくても楽しめる
公開日:2022.01.06