10:会話の場面|声をかけても気づかないとき
○エピソード
父が居間で何もせず椅子に座っていたので声をかけましたが、何の反応もありません。難聴を疑いましたが、好きなテレビ番組の音は聞こえているようで、先日は落語を見て笑っていました。
【対応1】正面に回って手を振り、反応があってから声をかける
呼びかけに反応がないと難聴を疑いやすいですが、認知症のある人の場合多くは、雑音のせいでかけられた声に集中できないこと、注意・意識が向くような声のかけ方ができていないことが考えられます。
あなたが声をかけるとき、まずは本人にあなたを認識してもらうことが大事です。認知症のある人の視野は以前よりかなり狭くなっていますから。本人の正面に立ちましょう。さらに、動いているものは認識しやすいので手をひらひらを振り、認識されたことを確認してから声をかけましょう。認識していないのに声をかけると驚かせてしまい、それが不信感につながることもあります。
【対応2】大きい声ではなく適度な声量で、ゆっくり短い文で話す
認知症のある人に限りませんが、難聴ではないなら、大きな声で話しかける必要はありません。ポイントは、複雑な言葉を使わず、わかりにくい表現を避けることです。シンプルでわかりやすい言葉を使いましょう。
また、早口で話したり、急かしたりしないよう気をつけましょう。あなたがゆったりとした気持ちでコミュニケーションをとると、認知症のある人は不思議とあなたの話し方に近いトーンで答えてくれます。
【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
【書誌情報】
『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』
著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
認知症は、理解しにくい言動を引き起こす脳の病気です。家族が「どう言葉をかけたらいいんだろう」「どう接したらいいのかな」「とてもつらい」と感じることが多いでしょう。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」では、介護現場の専門家が日々の接し方や対応のヒントを提供し、プロの視点と方法で、家庭での介護が少しでもラクになるように、ご本人とともにかけがえのない日々を過ごしてほしいという願いが込められています。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」を活用して、実践してほしいと思います。今後のためにも読んでおきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.07.27