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スポーツ選手の能力を伸ばす「ただ事実を伝える」選手への接し方とは!?【廣戸聡一ブレインノート】

Text:廣戸聡一

選手への接し方

●今起きていることをありのまま伝える
選手に何が足りないか、その要素を見つけるのは指導者の大事な役目です。そして、その要素がわかったら、ただ事実を伝えるようにします。最近は「褒めて伸ばす」のか「叱って伸ばす」のかという話題がよく取り沙汰されますが、褒めているか叱っているかのイメージを持つのは「言葉」ですから、私は常に褒めもせず、叱りもせず、できなかったときは「ここが悪いね」と言い、できたときは「できたね」と普通に話すようにしています。

ただし、できないことを指摘すること自体が、「苦言を呈している」ことになりますから、そこは気遣いながら、選手を傷つけないように話さなければなりません。今選手に何が起きているかを話し、それを解決するためのキーワードをひとつ与えてあげることが、選手を伸ばすことになるのです。

●指導者の言葉は選手を潰すこともある
以前指導したある野球選手は、コーチに「右手が下がって、ヘッドが下がってしまうからダメなんだ。バットが遠回りしているからグリップを早くすればいいんだよ」と言われ、バッティングが伸び悩んでいました。そこで私は、「バットを横から持つからヘッドが動く」ということを指摘しました。「縦に持つとヘッドが動かない」ことを体感することで、目に見えてバッティングが良くなり、打てるようになったのです。

これは、目に見える現象を引き起こしている「理屈」を、コーチが理解していなかったという事例です。指導者は常に、自分の言葉が選手を潰してしまう可能性があることも認識して、指導を行わなければなりません。

●すべての選手に同じことをするのは「不平等」
指導者はどの選手にも平等であることが必要ですが、ここで間違えてほしくないのは、頑張った選手には相応の恩恵があることが「平等」であるということです。誰よりも早く練習に来る選手や、誰よりもプレッシャーがかかり、負けたときの責任もある選手が優遇されるのは、当たり前のこと。すべての選手に同じことをするのは、むしろ不平等になるのです。

ある選手はダイヤモンドのように削っていかないと光らない、ある選手は真珠のように何もしないことが美しい、またある者はルビーのように研と いで局面を出すことで光ることもある。ダイヤモンドだけを光らせないように割り振っていくのが「平等」ということなのです。そして、このことを指導者自身が「平等」だと言い切ることも大切です。それができるのが指導者であり、できなければ選手を育てられません。

【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一

「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!