本当の意味での「体幹」とは?
●動作を主導する体幹部と頭蓋(脳)
近年、スポーツの現場では「体幹主導」という言葉をよく耳にします。動作の基本は「常に体幹が主導する」ということは確かなのですが、体幹=背骨だと誤解している方も多い気がします。正しくは「体幹」とは、脳をくるんでいる頭蓋と、脳下垂体から下りてくる脊髄神経をホールドしている胸郭、骨盤を総じて呼んでいるものです。
そして「体幹」は、実際の動作を主導する胸郭と骨盤からなる「体幹部」と、動作実行のエンジンとなる「頭蓋(脳)」の2つのユニットに分けられます。また、「体幹部」は胴体とも言います。
頸椎は、前後と左右屈、左右回旋の6つの動き(「6/6」の動き)をすることができます。一方、体幹にある胸椎は前後には動きません。左右に動くか捻転するだけで、「4/6」しか能力を持っていません。さらに胸椎の下につながる腰椎は前後にしか動かないため、能力は「2/6」です。腰を回せと言っても残念ながら回転はしない。つまり股関節と胸郭が動いたために腰が回ったように見えるのです。このように頸椎、胸椎、腰椎が連鎖して動くのが「体幹部」の働きです。
●脳の安定を保つために
あらゆるスポーツに共通する、もっとも大切な素養は「脳が安定することで、身体の各パーツをうまく連動させて動かす」ということです。脳が安定感を得ていることで、確実な動作を滞りなく行うことができます。そして、脳が安定するということは、つま
り脳が水平を保つということです。
そのために、頸椎、胸椎、腰椎は、それぞれの骨を積み上げた「アジャスタブルターンテーブル構造」で円筒形を形どっています。また、体幹のうちの体幹部が車のボディフレームだとすると、脳はまさにエンジンだと言えます。脳が十分に満たされている状態であれば感覚も鋭くなり、目的とする動作をスムーズに行うことができます。
安い燃料費で少ない荷物を運ぶなら軽トラック、土砂をたくさん運ぶならダンプカー、ひとりで早く移動したいならスポーツカー、などと車を選ぶことは、自分の身体に合ったスポーツジャンルを選択することにも通じるものがあります。
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.05.08