慎重に捜索を繰り返せ。伏兵の潜伏する場所だから
孫子は偵察の重要性を繰り返し強調する。それだけ伏兵による攻撃や奇襲、ゲリラ戦などが頻繁に行なわれていたのだろう。
孫子はいう。険しい場所やため池、くぼ地、葦原、小さな林、草木の密生した暗がりなどに差し掛かったら、慎重に偵察を反復せよと。単に偵察するのではなく、人を替えて何度も繰り返せとまでいっているのだ。
警戒されることは敵も承知しているから、そうやすやすとは発見されない場所に身を潜めているはず。また味方に内通者がいれば、敵を発見しても報告をしないに違いなく、そんな計略に引っかからないようにするためにも、人を替えてまでして何度も偵察を繰り返す必要があるのである。
両側が断崖であるとか、隘路が長く続くところでは、偵察は何度やってもやりすぎということはない。そのような進退の自由が利かないところでは、たった一人か二人の敵兵に上から岩や大木を落とされるだけでも大損害が出かねないのである。
日本には「千丈の堤も蟻ありの一穴から」「蟻の一穴天下の乱れ」などという諺があるが、わずかな見落としが大局に悪影響を及ぼす例は古今、枚挙に暇がなく、ささいなミスが敗北や失敗につながる可能性は否定できない。
孫子のいう入念な偵察活動を怠ってはいけないのである。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.05