昔は身のまわりの変化から天気を予想した
今のような天気予報がなかった時代は、空を眺め、風を感じ、生きものの様子や身のまわりのものの些細な変化などから天気を予想してきました。これを観天望気といい、ことわざの形式で伝承されています。全国的に伝わるものもあれば、地域限定のものもあります。なかにはほとんどあてにならないようなものもありますが、科学的に説明がつき、ある程度当たるものもあります。とくに、地域限定のもののなかには、今の天気予報よりも高い精度で当たるものもあります。
最新の知見をふんだんに取り入れ、高性能のスパコンで弾き出した現代の天気予報は、かなりの精度で当たります。しかし現代の天気予報にもいろいろな欠点はあります。新しい天気予報と古くからある観天望気を組み合わせ、天気とうまくつきあっていきたいですね。
今も昔も、雨が降るかどうかというのは人々の関心が高いことで、観天望気でも、雨兆をつかむためのことわざが多数存在します。雲に関係するものでも「○○雲は雨」というのが多いため、雨の前触れとされている雲をピックアップし、右ページにまとめました。いずれも低気圧接近時や、暖かく湿った空気の流入時に現れやすい雲なので、雨を告げる合図としてある程度理にかなっています。
太陽がかさをかぶると雨
晴天をもたらした高気圧の中心が東海上へと抜け、西から低気圧や前線が近づいてきているとき、最初に現れるのが巻雲や巻層雲など、高いところに浮かぶ氷晶からなる雲です。この氷晶は、太陽の光を屈折・反射させ、ハロという光の現象をもたらします。
太陽がかさをかぶるというのは、ハロのうち内がさ(P242)が現れた状態をいいます。巻層雲のうちは、太陽の光がしっかりと感じられ、地面にはっきりと影ができます。巻層雲が単体で出現し、天気に影響がない場合も多いのですが、時間とともに雲が次第に厚みを増してくる場合は要注意。天気が下り坂のサインです。
太陽と同様に、月がかさをかぶった場合も、雨の前触れとされています。月のかさに関することわざでは、かさの中に星が見えるか否かなど細かい条件をつけたことわざもありますが、これはあまりあてにならないかもしれません。
飛行機雲が広がると雨、すぐに消えると晴れ
飛行機の通過をきっかけにしてできる細長い雲を飛行機雲(P223)といいます。この飛行機雲の変化は、上空の湿り具合を知る目安となります。上空の空気がとても乾燥しているときは、飛行機雲がほとんどできないか、できたとしても細くてすぐに消えてしまいます。できたそばから消えて、彗星のような形になることもあります。
一方で上空が湿っているときにできた飛行機雲は、大きく広がって、いつまでもなかなか消えません。つまり、飛行機雲がすぐに消えるときは上空が乾燥しているのですぐには雨にならない、一方で飛行機雲が広がるときは上空が湿っていて、雲ができる可能性があるのです。
出典:『雲の図鑑』著/岩槻秀明
【書誌情報】
『雲の図鑑』
岩槻秀明 著