コンディショニングとは
●日本で初めて「コンディショニング」を定義
スポーツの世界では昨今、コンディションの重要性が説かれています。私はコンディションに対し意識的にアプローチする上で、「コンディショニング」という言葉をよく使っています。「コンディショニング」という言葉は、私が22年前に、初めて上梓した著書『筋力トレーニング&コンディショニング』(1997年/池田書店)の中で定義を試み、明文化しました。当時はまだその概念が十分に理解されてはいませんでした。
そのため、公的文書(特許出願)でも用いるなど、正しい理解が浸透するように機会があるごとに以下の定義を強調してきました。コンディショニングとは、スポーツを行うため、競技力を向上させるあらゆる要素のことを指すもの。つまり、「コンディション=体調・状態」を、競技力向上という目的に合うように整えていくことです。そのために重要なのが、健康な肉体・内臓・精神となります。
コンディショニングの要素
1.安定性
2.可動性
3.柔軟性
4.リズム感
5.出力能力
6.速度能力
7.持久能力
8.回復能力
9.学習能力
10.想像力
11.技術向上力
●重視したいのは故障を防ぐコンディショニング
スポーツの道具は技術革新によって徐々に進化し、道具の進化に伴ってスポーツの技術も変化しています。技術の高度化には故障がつきものですから、常に肉体の環境をベストに保つのは至難の業とも言えます。指導者からすると、その中で選手個人にいかにフォーカスするか、いかに選手の個体としての個性を理解して満たすことができるかを広い視野で考えないといけない。そういう意味で「コンディショニング」は多種多様なものです。
とはいえ、その前提にあるのは、健康である自分が揺らぐと、最高のパフォーマンスはおろかスポーツを行うことさえままならなくなるという事実です。ですから、まずは健康な身体を維持すること。そして、肉体を意のままに扱うには、自分の身体を知り、肉体が機能を発揮できる状態にキープしておかなければなりません。そのためには、自分の身体について、一度整理して考えてみる必要があります。まずは、身体に痛みがないか、疲れてもすぐに回復できるか、といったことをあらためて見直してみましょう。
ここで問題があれば、故障につながりかねないため、自分の身体をスポーツが楽しめる状態に整える必要があります。これが「コンディショニング」です。スポーツを取り巻く環境の水準が高くなっている今、まず大切にしたいのは故障を未然に防ぐための「コンディショニング」だと言えます。
●トレーニングと基礎体力の関係
安定した身体が作れたなら、技術トレーニングを行います。高い水準を目指して技術を開発するベースには、「4スタンス理論」の4タイプがあり、個体としての優位性をフルに使って進化していくことができます。また、平行して基礎体力作りも必要です。基礎体力とは、安定性と可動性、柔軟性、リズム感の4種類で、人の動作を成立させるために必要な要素です。こうして意のままに動かせる身体の状況を維持できれば、ウェイトトレーニングはサブトレーニングとして最小限にすることができます。
もちろん、筋肉があったほうが出力は大きくなります。また、速く動ける能力もあります。これを自動車にたとえるなら、馬力(出力)のある自動車は、おのずとエンジンが大きくなります。しかし、いくら大きなエンジンを積んでも、ギヤボックスや足回りが弱ければ釣り合わないことになってしまうので、やはりトータルバランスを優先して考えたほうが良いのです。
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.07.24