胃液や胃酸の逆流による粘膜への刺激による痛み
暴飲暴食をしたり、脂っこいものを食べたときにみぞおちから胸のあたりにかけて食道がチリチリと焼けつくような痛み、違和感を感じることがありますが、これが「胸焼け」です。
この症状は胃の入り口にある噴門の「下部食道括約筋」が開いて、食塊とともに胃液や胃酸が逆流し、食道などの粘膜を刺激することが原因です。
胃は本来、食べものが入ると噴門が閉じて逆流を防ぐしくみになっています。ところが、食べ過ぎなどで消化に時間がかかると、胃の中で渋滞が起こります。そのとき下部食道括約筋の締まりが緩くなっていると、逆流して「胸焼け」を起こしてしまうのです。
このような症状を、「胃食道逆流症(GERD)」と呼びます。GERDには、食道粘膜にびらんや潰瘍がみられるものとみられないものがあります。内視鏡検査で異常な病変がみられるものを「逆流性食道炎」といい高齢者や肥満の人に多くみられます。
一方、食道粘膜に病変がみられないものを「非びらん性胃食道逆流症」と呼び、こちらは比較的若く痩せ型の女性に多いという傾向があります。
GERDは、肥満や妊娠中、便秘などで内臓に常に圧力がかかっている場合になりやすく、空腹時や夜間の胸焼けが特徴的症状です。喉の違和感や声がれ、胸の痛み、咳など、食道以外での症状がみられることもあります。
また、食道の粘膜は、胃の粘膜と違い、胃酸の刺激から身を守るしくみを持っていないので、逆流性食道炎が繰り返されると「バレット食道」になり、バレット腺がんという食道がんになる可能性もあります。
脂っこいものを摂ると胃酸の分泌を促進しますので、低脂肪食をとること、禁煙、節度ある飲酒など生活習慣の改善も必要です。
出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志
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脳は重くてシワの数が多いほど頭がいいのか?
生物の体には不思議なポイントが沢山あります。そして特に最も神秘的なカラダの部位と言えば人間の脳です。まずは、人体の脳における不思議について解説しましょう。
動物と脳の関係を比較すると、一般に小動物ほど体重の割に脳が重く、逆に大型動物ほど軽いことがわかります。動物の脳と体重の間には、「脳の重量は体重の0.75乗に比例する」という規則性があり、これを「スケーリング」といいます。ただし、この動物界の普遍的な規則にあてはまらない動物がいます。それがヒトです。ヒトは、動物の中では例外的に大きな脳を持っているのです。
また、ヒトの場合、アインシュタインの脳が1230グラムと一般的な成人男性の脳(1350〜1500グラム)よりも小さかったことから、脳の大きさと頭のよさは関係ない、ともいわれます。しかし、カリフォルニア大学の「脳の大きさと知能指数(IQ)の関係」の研究では、わずかながら脳の大きな人ほどIQが高く、とくに「大脳皮質」の「前頭前野」と「後側頭葉」の皮質が厚い人のIQが高いという結果が発表されました。
天才は生まれつきではない、幼少期がポイント
ところが、さらに研究を進めると、皮質が厚くてもIQが高くない人がいることもわかりました。このことから「IQの高さは皮質の厚さより、脳が幼少期にどれだけ成長したかが重要」といわれてきました。この説を裏づけるように、IQが120以上の人の脳は、7〜9歳頃の幼少期にはむしろ平均よりも皮質が薄く、その後13歳まで肥大化し、厚みを増し続けていたとされ、幼少期の教育熱は高まりそうです。
しかし、一方でIQはあらゆる知能を網羅した数値ではなく、万能性がないことも把握する必要がありそうです。昔からよく「脳みそのシワが多いほど頭がいい」といわれます。しかし、脳のシワは胎児のときに大脳が形成される過程でつくられ、生まれたときにはすでにできあがっているため、成長してどんなに勉強してもシワの数は増えないそうです。
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【書誌情報】
『図解 人体の不思議』
監修:荻野剛志
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公開日:2023.10.13