いろいろな説があるが「腹膜のこすれ説」が有力
急に走り出したり、食後すぐに運動をするとお腹が突然痛くなって困ったことはありませんか。この痛みは英語で「スティッチ(Stitch)」と表現され、縫いもののひと針を意味します。
その原因にはいろいろな説がありますが、「脾臓の収縮」もそのひとつといわれています。脾臓は免疫や造血、血液の貯蔵を担になっています。激しい運動をすると筋肉がたくさんの酸素を必要とするために全体の血液量が足りなくなります。
その際、中にためられていた血液を送り出すために脾臓が急激に収縮し、左脇腹に痛みを感じるというものです。
また、食後に激しい運動をすると、血液が足りなくなり胃や腸がけいれんを起こすことがありますが、このけいれんが痛みとして脳に伝わり、脇腹が痛いと勘違いする「胃や腸のけいれん」説、あるいは、横隔膜とまわりの筋肉や内臓への血流と酸素の供給不足による「横隔膜のけいれん」説、消化の際に食べものと消化液の化学反応で発生したガスが、運動による体の揺れによって大腸に集まって膨らみ、そのために痛むという「ガス」説など痛む部位によっていろいろな原因が考えられています。
最近では、腹部の内側にある腹腔が運動によって上下左右に揺すぶられ、中の臓器が動いて腹膜が刺激され、腹膜がこすれて痛みが生じる「腹膜」説が有力となっています。
いずれの場合も予防として、食後すぐには運動をせず、十分な時間をとってから体を動かすようにしましょう。
運動をするときは、必ずストレッチなどの準備運動をおこない、はじめは軽い運動から始めます。とくに、ランニングやスイミング、ダンスなど、上半身に揺れによる負担がかかるスポーツでは、体幹を鍛えることが予防になります。
出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志
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監修:荻野剛志
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公開日:2021.10.17