よりよい選択に導く「ナッジ」とは
「ナッジ」という言葉をよく聞くようになりました。提唱者のシカゴ大学のリチャード・セイラ―教授がノーベル経済学賞を受賞してから、急速に浸透しています。
ナッジは行動経済学の知見を利用して、強制的ではなく、人が自発的に望ましい行動を選択することを促す考え方、手法のことです。選択時の環境と行動をデザインすることでもあります。ナッジには目的を達成したい人の行動を促進するものと、理想的な目的がない人にも理想をもたせて行動を促すものがあります。
2010年にはイギリスで、2015年にはアメリカでナッジを政策に応用する専用チームが設立し、社会保障、教育、健康などの分野で多くの成績を出しています。「ナッジ」は規制や強制ではなく、よりよい選択に誘導する考え方、手法のことで、訳すと「ひじで軽くつつく」「そっと後押しする」という意味です。実例として、ひとつの選択肢を選ばれやすく目立たせるなどがあります。
実際に世界で使われるナッジの例
たとえばイギリスの納税通知書には同じ地域に住む住民の納税率を記載することにより、滞納者の意識を高め年間約2億ポンドの税収増加を実現しました。日本でも各省庁や自治体がナッジを取り入れています。
八王子市では前年度の大腸がん検診受診者のうち未受診者の人に、「今年度、大腸がん検診を受診しないと、来年度は検査キットを送ることができない」という案内を送付したところ、「今年度、大腸がん検診を受診したら来年度も検査キットを送る」という案内を送ったグループよりも、受診率が7.2%高くなりました。
他にもアムステルダムのスキポール空港では、小便器にハエのイラストを入れたことで、みんながそこを狙ってくれるので、便器周辺が汚れなくなったそうです。そして最近よく見る、コロナ禍でソーシャルディスタンスをとるための「足元マーク」もナッジの一例です。足元マークがあることで、どこに立てばいいのかがすぐ分かるため、声を出さずに人を動かすことができます。
「ゼロからわかる 知らない損する 行動経済学」はこんな方にオススメ!
・行動経済学を学んでみたい!
・ナッジの実例はどんなものがあるのか?
・ビジネスに行動経済学を取り入れてみたい
・行動経済学は実際どのような場所で応用されているのか?
そう感じている方にはぜひ本書『知らないと損する 行動経済学』を手に取っていただけたらと思います。
出典:『ゼロからわかる 知らないと損する 行動経済学』著/ポーポー・ポロダクション
【書誌情報】
『ゼロからわかる 知らないと損する 行動経済学』
ポーポー・ポロダクション 著
コロナ禍により、さらに注目を集めている行動経済学。消毒液をプッシュするとおもしろい音が出ることで、手指の消毒を促進したり、レジ前に足跡のマークをつけてソーシャルディスタンスを保ったり。行動経済学は難解な経済の話だと思われることもありますが、そんなことはありません。「1980円はなぜか安く感じる」「中古品の買取価格に毎回満足できない」「投票の話を聞くだけで投票率が上がる」など、「つい、○○してしまう」という人の不思議な行動を扱う、身近なテーマです。本書ではお金と心理の話を中心に、そんな行動経済学のおもしろさが伝わる内容となっています。初心者の方はもちろん、行動経済学への理解を深めたいと考える方にもおすすめしたい一冊です。
公開日:2022.09.02