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飛行機雲は人工的な雲?!変わったメカニズムで発生する特殊な雲とは?【雲の図鑑】

Text:岩槻秀明

変わったメカニズムで発生する特殊な雲

何らかの理由で水蒸気を含んだ空気のかたまり(以下、空気塊)が持ち上げられると、断熱膨張・冷却という過程を経て、空気塊の温度が下がります。すると空気塊の中に含まれていた水蒸気が、水滴や氷晶に変化します。この水滴や氷晶が大量に漂い、目に見える形となったものが雲です(詳しくはP16)。

通常の雲は、「空気中に含まれる水蒸気」を材料に、上記のメカニズムで発生します。ところが、なかにはこれとは異なる特殊なメカニズムによってできる雲があります。たとえば、飛行機の通過をきっかけとしてできる飛行機雲はその最たるもののひとつです。

国際雲図帳の改訂版では、この特殊なメカニズムでできる雲がspecial cloudsとして取り上げられましたspecial cloudsの表記のしかたは母雲(P194)に準じています。まずは基本10種のどれかに分類したあと、その後
ろにspecial cloudsであることを示す単語を付記します。special cloudsは「○ ○ のメカニズムによって発生」という発生母雲(-genitus)を基本としています。ただし例外として、飛行機雲から変化してできた巻雲・巻積雲・巻層雲については、変化母雲(-mutatus)として扱います。

飛行機雲は人工的な巻雲。別の雲へと変化することも

今回special cloudsとしてリストアップされたのはflamma、homo、cataracta、silvaの4つのメカニズムです。flammaはラテン語で「火」という意味です。積雲や積乱雲のうち、山林火災や火山活動など、自然由来の火が発生のきっかけとなったものに対して、flammagenitus(flgen)と付記されます。

homoはラテン語で「人」という意味で、飛行機や工場の排気など、人間活動の結果発生した雲にhomogenitus(hogen)と付記します。この定義により、飛行機雲そのものは人間活動に伴って発生した巻雲(Ci hogen)という
位置づけになりました。また、飛行機雲(Ci hogen)の性質が時間とともに変化し、巻雲としてさらに発達、または別の雲形(巻積雲、巻層雲)へと変わった場合は、homomutatus(homut )と付記します。

cataractaはラテン語で「滝」という意味です。滝の周辺の気流と、滝しぶきから蒸発した水蒸気がつくりだす層雲や積雲に対して、cataractagenitus(cagen)と付記します。silvaはラテン語で「森林」という意味です。木々の葉からの蒸散によってできる層雲で、silvagenitus(sigen)と付記します。

人間活動に伴って発生する巻雲

飛行機の通過によってできる雲で、航跡に沿って白い線を描きます。飛行機から放出された水蒸気や微粒子が雲をつくります。この雲は近年、地球温暖化の要因のひとつになっていると考えられています。2017年版の国際雲図帳では、人間活動に伴って発生した巻雲(Ci hogen)として正式に位置づけられました。

これとは別に、雲の広がっている場所を飛行機が通過すると、航跡の通りに雲が消えることがあります。これを消滅飛行機雲と呼びます。消滅飛行機雲の穴が成長すると穴あき雲(cav)になります。

出典:『雲の図鑑』著/岩槻秀明

【書誌情報】
『雲の図鑑』
岩槻秀明 著

季節ごとに見られる雲や、気象予報の役に立つ雲など、雲の外観から判別できる雲図鑑に加え光の作用によって見られるレアな雲や、雲ができる過程など科学的なメカニズムまで解説。ポケットに入れていつでも楽しめる雲図鑑なので自粛の際でも公園や河原で子供と遊ぶ時や、外に出られなくても楽しめる