「各国の通貨価値」はどのようにして決まるのか?
日本人の賃金は下がり続けています。2020時点でのOECD(経済協力開発機構)による平均年収の調査では、米国6万9392ドル、スイス6万4824ドル、カナダ5万5342ドル、ドイツ5万3745ドル、英国4万7147ドル、フランス4万5581ドルに対して、日本は3万8515ドルにすぎません。
この金額は購買力平価換算ゆえに物価も考慮された実情を反映しており、過去20年間の下落は加盟38ヶ国中で日本だけでした。90年代初頭は、米国に次ぐ世界2位を記録した日本ですが、今ではこの有様です。 日本では
97年に賃金水準が最も高かったのですが、この年あたりから、日本は恒常的なデフレに陥ります。デフレは物価を下げますが、賃金にも下押し圧力が働きます。バブル崩壊後の日本では、非正規雇用も広がり、今や労働者の4割に及びます。コロナ禍になる前まで、人口減で人手不足も叫ばれた日本ですが、賃金は上がらず、経済学の教科書通りにはなりませんでした。
賃金が上がらない理由はいろいろ挙げられます。労組の組織率も16%台ゆえに賃上げ圧力も弱く、中小零細企業の比率が99・7%ゆえに生産性が低いからともいわれます
もっともバブル崩壊以降、大企業が警戒心を強め、賃金を抑制してきたのは、2019年の内部留保額が475兆円に膨らんだことや、労働分配率の低下を見ても明らかです。企業は利益を人件費にも設備投資にも回さず、ひたすら蓄積を図ってきたわけです。賃金が増えなければ、消費が伸びず、内需が減少するので、デフレ脱却もできず、結局企業の首を絞めます。低賃金で貯蓄もできない状況は、将来不安を高め、国力衰退を早めます。
出典:眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話』
神樹 兵輔 著
日本社会をとりまく環境は日々変化を続けています。特にここ数年、令和の時代に入って、日本も世界も大きな変化が起こっています。日本の経済を知ることはイコール「世界や社会の今」を知ることにもなります。本書は〝経済のことは難しくてよくわからない〟というような人たちに向け、最低限知っておきたい経済の基本を身近なテーマと共に解説、読み解く一冊です。行動経済学から、原価や流通や利益のしくみ、生活に密着した経済の疑問や問題点など、いま知っておきたい経済やお金のことを、図とイラストでわかるやすく解説していきます。経済のしくみや原理原則を理解しないまま日常生活を過ごしていると損をしてしまうことになってしまいます。賢く今の世の中を生き抜くためには、世の中の動きやそこに潜む経済のメカニズムを理解することは必要不可欠なものです。
公開日:2022.02.18