5:お金の流れは人間の血液と同じように重要
「お金」は経済の「血液」によくたとえられます。
人の体内では血液が循環し、酸素や栄養を細胞の隅々に供給します。同様に社会の中では「お金」が回ることで人々の暮らしも成り立たせています。
日本はバブル崩壊(1990年)以降の不良債権処理の過程で、次第に「お金」の目詰まりを起こします。バブルの後遺症は具体的には「金融の目詰まり」です。
企業が借金を早く返そうとして、お金を使わなくなると、需要は萎んでいきます。
そうなると、1997年以降は「お金」の価値が高まり、モノの価値が下がっていくデフレに陥り、 その後は「失われた30年」と言われるまでに「お金」が社会に回らなくなったのです。
日銀はそのため、「大規模異次元緩和」という政策で、民間金融機関の国債を買い取り、お金を世の中にジャブジャブ流しまくりました。日銀の当座預金にお金がたまるばかりで、銀行が貸し出し時の金利を下げても、資金需要は弱く、世の中のお金の総量は増えませんでした。
しかし、コロナ禍後の世界では、需要の高まりで景気がよくなり始めます。景気が過熱しないよう米国やEUは金利を上げました。金利を上げると国債の価格は下落し、銀行の保有国債の含み損は膨張します。
しかし日本では金融緩和を続けざるをえず、金利差で日本円が下がり、昨今の円安物価高に見舞われます。「過ぎたるは及ばざるが如し」で、10年も続けた異次元緩和の後遺症でした。
血液は骨髄という臓器で作られますが、お金がどう循環していくのでしょうか。日銀が発行した紙幣が民間金融機関に回り、貸出しを繰り返すことで口座預金残高が増えていきます。これが「信用創造」と呼ばれる機能で、お金が増えます。
循環しないと…
人の体内…血液が循環している
→循環しないと…病気になってしまう
世の中…お金が循環している
→循環してないと…不景気になってしまう
人々がお金を使い、お金が世の中を循環すると景気がよくなり、さらにお金が循環することにつながります!
血液…骨髄で作られる
お金…日銀がお金を発行
→民間金融機関が人々(企業)へのお金の貸出しを繰り返すことで、世の中に流れるお金の量が増えていきます
【経済とお金の豆知識】
日銀の 2023 年 11 月発表の 9 月中間決算では、金利上昇で保有の日本国債が下落し、すでに 10・5 兆円の「含み損」を抱えています。簿価会計ゆえに「含み損」ですが、さらに膨らめば債務超過です。
【出典】『眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話』著:神樹兵輔
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話』
著:神樹兵輔
経済社会は「価値の尺度」と「交換」に基づき、私たちの日常生活に大きな影響を与えています。歴史的に見れば、江戸時代の日本では貨幣経済が発展し、物々交換から現金取引への移行が進み、一方でアメリカは金融政策や税制改革を通じて市場の豊かさを維持しました。近年では目的に基づいた合理的な行動が新たな価値を生み出す一方で、非合理的な選択も経済に影響を及ぼしています。「眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話」では、こうした経済社会のカラクリを解き明かし、市場の豊かさや人々の価値観がどのように形成され、どのように経済活動に影響を与えるのかを探り、この知識を通じて読者が豊かで充実した生活を送る方法を見つける手助けを目指します。
公開日:2024.08.06