SPORTS COLUMN
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プロ野球ストーブリーグ2018(野手編)

Text:橋本雅生

浅村、丸、V戦士の流出はある!?

続いて野手陣を見ていこう。注目は両リーグで首位をひた走る西武の浅村栄斗と広島の丸佳浩だ。二人は打撃だけではなく、走攻守の三拍子が揃ったユーティリティープレイヤー。過去にはゴールデングラブ賞も受賞しており、FAを行使すればインパクトは絶大だ。今回のFA市場の目玉となる二人に他球団は熱視線を送っている。

昨シーズンからキャプテンに就任し、通算1000安打、100本塁打など、節目となる記録を達成した浅村。ファーストストライクから振っていく積極的かつ勝負強い打撃が持ち味で、今季はキャリアハイの成績が狙えるほど好調をキープ。自身初めてのリーグ優勝が目前で来季の移籍はあまりイメージできないが、FAは何が起こるかわからない。現に浅村は複数年契約を固辞し、今季は単年契約を結んだ。FA権取得後のコメントでは「特に考えていない」としながらも、FA行使を視野に入れた単年契約の見方もある。また、西武は12球団で最も多くの選手をFAで放出しており、破格の年俸で引き留めることをあまりしないチームだ。そのため来季の去就は不透明と言える。

さて、二塁手で打線の主軸になる浅村は多くの球団が欲しいはずだが、FAとなれば銭闘が必至。移籍の可能性があるのは巨人、阪神、ソフトバンク、オリックスあたりに絞られる。その中で熱心に調査をしているのがソフトバンクだという。ここ数年はFA戦線に参戦していないソフトバンクだが、今季は主力が例年にないほど故障し、二塁は川島慶三、牧原大成ら6選手が守る流動的なポジションになっている。また、一塁手の内川聖一、三塁手の松田宣浩は30代半ばを過ぎ、スムーズな世代交代ができていない。そこで内野の守備をすべてこなせる若い浅村を獲得できればチームが抱える懸念が解消する。ソフトバンクは浅村を一本釣りする構えを見せており、FAを行使すれば破格の条件で獲得に乗り出すはずだ。なお、ソフトバンクには内川のようにFAで移籍した選手が活躍できるような土壌がある。同じパ・リーグでもあることから、浅村が移籍を考えれば本命と考えてもおかしくない。

カープ、丸の来年のキャンプ地はどこに?

千葉県出身、丸の決断は!?

では、広島の丸はどうだろうか。プロ入り2年目の11年からスタメンに定着し、高い長打力と出塁率を持ち味として不動の3番打者としてチームを引っ張ってきた丸。緒方孝市監督が「3番として100点満点」と絶賛するその打撃は、状況に応じてチャンスメーカーやポイントゲッターとなり、広島打線の「つなぐ野球」を象徴する。毎年進化するその打撃は止まることを知らず、昨季は最多安打とリーグMVPを獲得。今季はさらに長打力が上がり、初の本塁打王も目前に迫っている。丸自身は自分の成績よりも今年こそ日本一と意気込んでいるが、一部の報道でFA行使の可能性が伝えられた。再び黄金期を迎えた広島を出るメリットがあるかと言えば疑問符が付く。だが、千葉県出身の丸とその家族は筋金入りの巨人ファンであり、憧れの選手を松井秀喜と公言している。また、丸の年俸は日本人選手ではトップの2億1000万円(推定)だが、契約公開時に笑顔はなかった。近年の活躍を考えるともっと評価されてもいいだけに、FAの選択肢もあり得る話だ。

丸が移籍する場合の大本命になりそうな巨人は4年連続でV逸。岡本和真や吉川尚輝が台頭して多少若返ったのが救いだが、左でクリーンアップを任せられる若手は出てきていない。阿部慎之助や亀井善行の現役生活が少ないことを考えると、丸が加入するメリットは計り知れないだろう。ここ数年のFA補強が失敗していても、脂が乗りきった丸なら話は別。現在の2倍程度の年俸を提示して迎える準備を進めてくるはず。一方の広島はこれまでに新井貴浩らの主軸打者をあっさりと放出してきたが、あの頃とはチーム事情が異なる。常勝軍団になって観客動員数を増加させ、リーグ3連覇の原動力になった丸を簡単に手放すことはないはず。実際に丸がFA権を取得すると、即座に松田オーナーが慰留を明言しており、大型複数年契約で引き留めると見られている。原則として「他球団の評価も聞いてみたい」を許さない広島で丸の決断はいかに。

FA権を行使せず残留した日本ハムの中田は、昨季のスランプを克服し、今季は2割台後半の打率と30本に迫る本塁打を記録。今年は海外FA権を取得し、同じポジションの清宮幸太郎が存在感を示していることから来季の去就が注目される。ただ、主に一塁しか守らない中田は起用法が狭まり、高額年俸もネック。FAを行使しても獲得に乗り出す球団は資金力があり、日本人選手の大砲を補強したいチームに限られる。そうなると候補は去年のこの時期に早々と撤退宣言をした阪神が本命。期待されて入団したロサリオは一塁を守っているが、お世辞にも4番としての活躍をしたとは言えない。中田は大阪桐蔭時代に甲子園とゆかりがあり、金本知憲監督とは同じ広島出身の同郷。かねてより噂されていた阪神入りが現実のものとなるかもしれない。

この他ではソフトバンクの長谷川勇也とロッテ・角中勝也もFA権を取得。今季で契約が切れる長谷川は、手術を受けた右足首の影響もあって50試合ほどの出場に留まった。選手層が厚いソフトバンクでは、ポジションが中村晃やアルフレド・デスパイネとかぶるため、来季もスタメンの座が約束されているわけではない。昨季はトレードの噂が出ているだけに、FAを行使して出場機会を求めることもありそうだ。俊足巧打のリードオフマンは貴重な存在なだけに、必要とするチームは多いだろう。四国アイランドリーグ出身の角中は、過去2回の首位打者に輝くなど実績十分。今季はケガで出遅れたが、自慢のミート力であらゆるコースに対応する打撃は健在。ただ、FAランクがAのため、行使したとしても獲得に乗り出す球団は限定的と見られる。