SPORTS COLUMN
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CS史上最高のドラマチックな幕切れ

Text:小川隆行

光ったベテランの存在価値

過去6度の下剋上の中で「ベテランの存在価値」を感じさせたのが、05年ロッテ対ソフトバンク戦だ。

両チーム2勝2敗、勝ったほうが優勝となる最終第5戦。1対2の8回表、先頭打者として代打で登場した初芝清は三遊間に高いバウンドのゴロを放った。飛んだ位置がよく、サードのバティスタとショートの川﨑宗則が交錯する間、懸命に走った初芝は間一髪セーフ。続く福浦和也が一、二塁間を割ると、1死後5番里崎智也がレフトフェンス直撃の二塁打を放ち、逆転に成功したロッテが31年ぶりのシリーズ進出を決めた。

内野安打を放ったのが俊足バッターではなく、この年限りで引退するベテランという点がおもしろい。恐らくはベンチのテンションも一瞬で高まったはずだ。短期決戦には運が必要だが、レギュラーシーズンでわずか11安打しか放っていなかった初芝の内野安打は「奇跡」と称されている。

下剋上こそ達成できなかったが、CS史上最高のドラマチックな幕切れだったのが、06年パ・リーグ第2stにおける斉藤和巳のマウンドだ。

この年のパは優勝の日本ハムに2位西武が1ゲーム、3位ソフトバンクが4ゲームという混戦状態だった。ファーストステージの初戦、西武対ソフトバンクのゲームは、松坂大輔と斉藤和巳の両エースが互いに譲らない投手戦を披露。虎の子の1点を守り切った松坂が完封を果たし、負けた斉藤はベンチでグラブを叩きつけるほど悔しさを露わにした。「全国のちびっこも観ている。やってはいけませんでしたね」と、後に斉藤は反省している。

エース斉藤和己、リベンジなるか

初戦こそ負けたが、エースの好投に報いるべくチームは西武に連勝。斉藤にリベンジの機会を与えた。そして迎えた日本ハムとのセカンドステージ第2戦。「負けたら終わり」の状況下で、斉藤は気迫満点のピッチングを披露。9回表まで両チーム無得点の緊張感あふれる展開となった。

9回裏、斉藤は先頭の森本稀哲にストレートの四球を与えた。この年のリーグ得点王だけに「出してはいけない」との思いが斉藤の指先をわずかに狂わせた。リーグ犠打王の田中賢介が送りバントを決めると、3番小笠原道大を歩かせ4番セギノールを三振。2死一、二塁となった場面で5番稲葉篤紀のセンター返しの打球をセカンド仲澤忠厚がキャッチ、すぐさまショート川﨑宗則に放ったが、スタートを切っていた一塁走者小笠原の足が一瞬早く到達、その勢いから捕球した川﨑が一瞬体勢を崩した。

その直後。マウンドの斉藤が振り返ると二塁走者の森本が迷わず三塁を蹴っていた。気づいたときには既に遅く、日本ハムが劇的なサヨナラ勝利で優勝チームの意地を示した。敗れた斉藤はマウンドで起き上がれず、ナインに両肩を支えられてベンチに引き上げるほどの落胆ぶり。それだけこのゲームに懸けていた。「3年連続プレーオフで敗れていたのはもちろんですが、エースとは負けないことが一番大事だと常々思ってきました」と語っている。
この年18勝5敗、03年からの4年間で64勝16敗。勝率8割という驚異的な数字を残した大エースは「勝つ」よりも「負けない」ことを信条としてきた。負けを減らせば貯金は2ケタになる。それが信じられぬ勝率に結びついていたと語る。

そして、この年を最後に斉藤から輝きが失われた。4年間無理して投げた代償が大エースの身体をじわじわと蝕み、6年間もの長きに渡ってリハビリに励み、静かにユニフォームを脱いだのである。

さて、今年のCSはどんなドラマが待っているだろう。ワクワクしながらそのときを待ちたい。

初出:がっつり!プロ野球21号