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栄養ケアマネジメントとの違いとは?

栄養ケアマネジメントとの違い

アスリートには栄養サポートが求められる理由を理解したところで、今回はそのための実際の栄養管理システム、いわゆる「スポーツ栄養マネジメント」についてより理解を深めていきたいと思います。

本連載の2回目(『スポーツ栄養の世界とは』その1)において、「日本では、栄養管理のシステムを栄養ケア・マネジメントといって、既に病院や介護施設などで用いられていますが、それをそのままスポーツの現場に流用することはできなかった。そこで、新たにスポーツ栄養マネジメントというシステムを開発した」と述べました。

では、なぜスポーツの現場に流用することができなかったのか。それは、いわゆる栄養ケア・マネジメントというのは、病院や介護施設などにおいてすべての食事をほぼ一方的に管理されている方々のためのものであるから。つまり、対象者に対して何か求めなければならないなどの設定は基本的にはなく、食べきってもらえるか否かについては管理栄養士・栄養士の側が責任をもち、さらに結果的に食べきれなかった場合にはどうするかなどについても、すべて管理栄養士・栄養士に委ねられるから、というわけです。

ところが、アスリートやスポーツ栄養の対象者となる人たちの場合には、自分たちの意思で選んで食べることができるがゆえに、掲げた目標に対してどういうことをすればいいのか、あるいはアスリート自身に実効性が伴っているか否かなどについて確認しながら進めていかなければなりません。したがって、サポート計画においては後述する「行動計画」をより明確にすることが重要なポイントとなります。それによって、日々の栄養管理がその選手に合ったものになるかどうか考えることができるようになり、かつ選手自らが行動に移すことができるようになる、というシステムづくりだからです。

スポーツ栄養マネジメントの流れ

では、スポーツ栄養マネジメントについて具体的に解説していきましょう。
スポーツ現場における管理栄養(栄養サポート)は、スポーツ栄養マネジメントに従って進められます。例えば、20名のチームであれば、最初にマネジメントの目的と期間を決め、目的を達成する必要があるアスリートを抽出して個人サポートを行っていくというわけです。なお、個人サポートは、スクリーニングされた人数分を行うことになり、その流れについては、以下の手順によって進められます。

「まず、アセスメントによって客観的な事前評価をし、目的達成のための課題や問題点を明らかにする。次に、その結果を踏まえ目的を達成するための個人目標を決める。目標が決まったら、栄養補給計画を立てて、その計画を達成するためにアスリートが実行する目標(行動計画)を立てる。同時に、行動計画を実行する際に必要な知識やスキル教育する(栄養教育)。さらに、スムーズに確実にサポートを進めるために、アスリートの周りの人たちとの連携の計画も立てる(スタッフ連携)。そして、すべての計画を立てた後にサポートを実施する。サポート実施中は、計画通りに進んでいるかどうか、面談などをしながら確認して支援を続け、もしも目標や計画に不具合が生じた場合には変更して進めていく。サポート期間が終わったら、モニタリング(再アセスメント)を行い、サポート後の現状を把握し、個人目標を達成していたかどうかを確認する。モニタリングの結果からの個人目標の達成状況、個人サポート中のプロセスや競技力の変化などを総合的に評価(個人評価)する」

こうして、マネジメントの対象者としてスクリーニングされたアスリート全員分の目的の達成状況や成果をまとめたものが、最終的にマネジメントの集団的評価となる。このように栄養サポートとは、まず目的をもって期間を決め、さらに計画を立ててから実施し、成果を上げることをいうのです。

例えば、レクチャーやセミナーなどで、バランスよく食べることの教育だけを受けた場合には、サポートを受けているとはいえません。真の栄養サポートとは、アスリートの「栄養・食」にかかわるすべてに関してマネジメントする、あるいはしてもらえることをいうのです。

一般社団法人日本スポーツ栄養協会発足の目的

管理栄養士・栄養士は栄養のプロフェッショナルですが、特にスポーツ栄養に特化したプロフェッショナルの資格として(公社)日本栄養士会と(公財)日本スポーツ協会が認定する「公認スポーツ栄養士」(現在の資格取得者は312名)があります。そういった意味で、公認スポーツ栄養士は、まさに質の高いスポーツ栄養マネジメントを実施できる人材といえるでしょう。

東京2020を前に、ますますニーズが高まるであろう公認スポーツ栄養士やスポーツ栄養の知識やスキルを持つ管理栄養士ですが、残念ながらこの分野の職能はあまり認知されておらず、彼らとのアクセスポイントもまだまだ整備不十分であったことは否めません。同時に、スポーツ栄養に対する正しい情報発信を担い、産業界やメディアの要請に応えていけるようなスポーツ栄養界の窓口もなく、大きな機会損失となっていました。このような課題を解決するためにも、私は当協会発足を決断するに至った次第です。

私たち一般社団法人日本スポーツ栄養協会は、スポーツ栄養の普及推進とその活用領域を広げ、公認スポーツ栄養士と管理栄養士の活躍の場を作ることを目的としています。スポーツ栄養の普及により、スポーツ振興に寄与することはもちろん、日本の老若男女全員が元気で活力のある生活を享受できる社会づくりの一端を担うことを目指したい。特にアスリートの皆さんには、当初の目的を達成するためにもぜひ、スポーツ栄養マネジメントを導入してほしいと思います。

一般社団法人 日本スポーツ栄養協会(Sports Nutrition and Dietitian Japan)
設立記念メディアセミナー 『スポーツ栄養の世界とは』
SPEACH:鈴木志保子(一般社団法人 日本スポーツ栄養協会理事長、公益社団法人日本栄養士会副会長、神奈川県立保健福祉大学 教授)
TEXT:光成耕司