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常勝軍団から最下位にまで転落させた監督の油断と準備不足とは!?【東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方】

Text:樋越勉

最下位

組織の土壌作りを終えても、常に順風満帆だったわけではない。1991年秋から1部リーグで戦っていたが、優勝するのは1994年の秋までかかった。さらにその1年前の秋には最下位に沈み、入替戦でなんとか1部残留を決めた。

チームの雰囲気がよどんでいるように見え、何となくチームに活気がないのは感じていた。シーズンに入る際に「油断するな、強いと思うな、自分たちが一番弱いと思え」と話したが本当に最下位になってしまった。最下位の理由を考えてみると「選手に油断をするな」と言いつつ、監督の私自身に油断があったのかもしれない「他チームよりも戦力が整っている」「普通にやっていれば勝てる」というような慢心があったのだろう。それが作戦にも出てしまい、チーム全体に伝わってしまったのだ。

ある日の第一試合、私はその前日に翌年の選手勧誘で、高校の監督さんに会うため、選手たちとは違う宿舎に泊まっていた。

油断したわけではなかったのだが、翌朝、選手を宿舎に迎えに行く道中の高速道路で事故が起き、試合時間ギリギリの到着になってしまった。その頃は携帯電話もなく、選手たちに連絡する術もなかった為、何も知らない選手たちは「監督が試合に間に合わない」「試合に出れないのでは?」と不安の中、宿舎で私の到着を待っていた。

私は宿舎に着くと、選手たちに「すぐ乗れ、すぐ行くぞ」と旭川スタルヒン球場へ向かった。球場に到着した時は、既に試合30分前であり、慌ただしく、アップ、ノック、そして試合が始まった。やはりその動揺は打ち消されず、エースは不調で負けるはずの無い下位チームに負け、そこから怒涛の連敗街道へ突っ込んでいった。これが最下位の現実だった。私の油断、私の慢心。選手に言っていながら私自身が準備不足であった。その準備不足が学生に反映してしまった。あの最下位の瞬間はとても反省をした。

シーズン中の休みに部員たちにリフレッシュを期待し、金を持たせ近くの遊園地である三井グリーランドへ行かせた。しかし、それはリフレッシュにはならず、その時間が彼らの不安を増幅させてしまった。今までであれば、休みの時も練習をしたはずなのに、どこかで私自身の弱さが出たのかもしれない。休養を与えること、休養してリフレッシュさせること。これが通常のチームであれば、効果的だったのかもしれない。

 

しかし、まだまだ若いチームには気持ちの切り替えはできなかったのだろう。指揮官として大きな失敗だった。油断と準備不足を選手が感じ取ってしまうという最悪の事態。これは組織も一緒で、長たる者が油断をしたり、準備を怠ったり、スキを作ることは、組織全体に不安を募らせ、マイナスの方向にいってしまう事になると思い知らされた。長たる者、常に前を見て、常に強い意志を持ち、組織の人間たちに伝えるべきことを伝え続けなくてはいけないのである。

出典:『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』著/樋越勉

『東農大オホーツク流 プロ野球選手の育て方』
著者:樋越勉

多くのプロ野球選手を輩出する北の最果て、北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパス野球部。恵まれた施設環境ではないにも関わらず、なぜ有力選手が育つのか⁉東農大学野球部のカリスマ、樋越監督の選手を見抜く眼力と、その育成術を紹介‼プロ野球選手の育て方、ドラフトへ送り込む手腕、練習環境の整え方などを、具体的に解説するプロ野球ファンや指導者必見の一冊。愛弟子の周東佑京のコメントも収録。

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