病院での常勤医時代の経験を元に、苛酷極まりない救命現場の実態を描き、命と魂の相克という重いテーマを突き付けた2023年発表の作品が、大幅な改稿・加筆を経て、いよいよ単行本化されます。
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朝比奈秋『受け手のいない祈り』
2021年のデビュー以来、医師としての経験と驚異の想像力で話題作を次々に発表してきた朝比奈秋。昨年に第171回芥川賞を受賞した『サンショウウオの四十九日』では、結合双生児の姉妹を主人公に、感覚を共有しながらも人格を異にするという二人の内面世界を見事に文学として表現し、そこから人生の普遍を導き出して高い評価を得ました。
今回刊行される『受け手のいない祈り』は、『サンショウウオの四十九日』を発表する前の2023年秋に書かれた作品です。勤務医として救命医療に従事していた経験を元に、想像を絶する過酷な医療現場の真実を描いています。命を救うという崇高な目的の陰で、魂を削らされている多くの医師たちの叫びが聞こえて来るこの小説は、文芸誌に掲載された当初から話題を呼び、今期の芥川賞はこの作品で決まりという声も多く聞かれましたが、候補になりませんでした。
今回、大幅な加筆と改稿でさらにテーマを深め、決定版として刊行いたします。
同時期に発表した『東京都同情塔』ではなく、
この作品が芥川賞を取ると思っていた。
――九段理江氏(作家、『東京都同情塔』で第170回芥川賞受賞)
「誰の命も見捨てない」を院是に掲げる大阪近郊の総合病院の青年医師・公河(きみかわ)は、別の病院の産科医だった医大時代の同期が過労死したことを知った。だが感傷に浸る間もなく、患者は次々に運び込まれる。感染症の拡大で医療体制が逼迫し、近隣の病院は夜間救急から撤退、公河たちの病院が最後の望みになった。徹夜での治療や手術が続き、七十時間を超える連続勤務で公河たちの身体と精神は限界に。命を救った患者たちは日常に戻るが、自分たちはこの地獄から出られない。我々の命だけは見捨てられるのか――。
医師の経験と驚異の想像力で話題作を次々と発表する作家が、命と魂の相克を描く。
■著者紹介
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朝比奈秋(あさひな・あき)1981年京都府生まれ。医師として勤務しながら小説を執筆し、2021年、「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。2023年、『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。同年、『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞と第45回野間文芸新人賞を受賞。『サンショウウオの四十九日』で第171回芥川龍之介賞を受賞。他の作品に「私の盲端」など。
■書誌情報
【タイトル】受け手のいない祈り
【著者名】朝比奈秋
【発売日】3月26日発売
【造本】四六判ハードカバー 240頁
【定価】2090円(税込)
【ISBN】978-4-10-355732-6
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/355732/
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公開日:2025.02.16
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