職場の介護支援体制が「整っている」と回答したのはわずか3割。介護と仕事の両立「できないと思う」は約6割も。「介護のことを職場に相談しづらい」最も多い理由は「プライベートなことを職場で開示したくない」
事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLのグループ会社である株式会社LIFULL senior(代表取締役:泉 雅人)が運営する業界最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL 介護」は、2025年4月1日に改正育児・介護休業法が施行されることを受けて、65歳以上の親を持つビジネスパーソンを対象にした「介護と仕事の両立に関する意識調査」を発表しました。

調査背景
育児・介護休業法改正が迫る!4月から企業の介護支援体制の具体化が求められることに
社会の高齢化に伴って、仕事をしながら家族の介護にあたる「ビジネスケアラー」は今後増加が見込まれています。しかし、介護は先が見えず、突発的なトラブルも多いため、仕事と介護の両立が困難になり仕事を手放す、いわゆる「介護離職」も起きている現実があります。
介護等の理由で離職する人は2023年の調査では7.3万人にのぼり(※)、今や労働人口の減少を促す社会課題として認識されています。介護離職を社会全体で防止する機運が高まっており、2025年4月に施行される改正育児・介護休業法では、介護と仕事を両立できる雇用環境の整備の項目が盛り込まれました。
具体的には、介護休暇を取得できる労働者要件が緩和され、テレワークの導入が事業主に努力義務化されます。また介護と仕事の両立支援研修や相談窓口の設置、介護休業に関する制度や支援制度の情報提供等が義務付けられることになりました。
そこで法律改正の施行を目前に控え、LIFULL 介護では65歳以上の親を持つビジネスパーソンを対象に、介護と仕事の両立に関する意識調査を実施しました。
※厚生労働省 令和5年雇用動向調査
サマリー
● 職場の介護支援体制について「整っていると思う」はわずか3割。
● 職場から介護に関する情報提供がなされていないと思う人は半数に上る。
● 介護と仕事を「両立ができないと思う」人は半数以上。不安に感じること1位は「精神的、肉体的に負荷が大きい」。「長期的、突発的な休みが取れない」声も多数。
● 介護のことを職場に「相談しづらい」が4割。相談しづらい理由最多は「プライベートなことを職場で開示したくない」。また「前例がない」も3割。
● 介護と仕事の両立を考えて親を介護施設に入居させることに前向きな人は半数を超える。一方で入居させたくない理由に、金銭的理由や「同居、近居での介護」への志向が。
データ
職場の介護支援体制について「整っていると思う」はわずか3割

職場の介護支援体制について尋ねたところ「整っていると思う(介護休業、時短・在宅勤務制度・相談窓口などがある)」と「ある程度は整っていると思う(いくつかの支援制度はあるが、十分ではない)」が合わせて31.4%の一方で、「整っていないと思う」と答えたのが45.0%となっており、後者の方が多数であることがわかりました。

また、介護支援体制が「整っていると思う」、「ある程度は整っていると思う」と答えた方を対象に、職場にある介護支援について尋ねたところ、「介護休業、介護休暇制度」は75.0%で、次いで多かった「介護と仕事の両立に関する相談窓口」でも26.7%にとどまりました。
今回の法改正で、企業に求められる雇用環境の整備施策の一つとして相談窓口の設置があります。介護と仕事の両立に関する相談窓口を設置する企業は2025年以降に増加していく可能性があります。
職場から介護に関する情報提供がなされていないと思う人は半数に上る。

職場で介護に関する情報や利用できる制度について「情報提供されていないと思う」と回答したのは51.9%と半数以上に上ることがわかりました。現状は企業からの介護関連情報の提供は不足しているようです。
介護と仕事の両立を支援するには、介護休業などの制度を整備すると共に、さらにどんな条件で利用できるのか、また介護と仕事を両立するにはどのような介護体制の構築が必要か、など情報の提供が必要です。
今回の育児・介護休業法の改正で、企業には従業員に対して介護と仕事の両立支援のための研修や相談窓口の設置が求められており、今回の改正の狙いである「介護離職を防ぐ雇用環境の整備」は、アンケート結果からも喫緊の課題と言えそうです。
介護と仕事を「両立ができないと思う」人は半数以上。不安に感じること1位は「精神的、肉体的に負荷が大きい」。「長期的、突発的な休みが取れない」声も多数

介護と仕事が両立できそうかを尋ねたところ「あまり両立できないと思う」、「全く両立できないと思う」の合計は58.6%に上り、半数以上が両立に不安を感じていることがわかりました。

さらに「あまり両立できないと思う」、「全く両立できないと思う」と回答した人に、介護と仕事の両立について不安に感じることを尋ねたところ、最も多かったのは「精神的、肉体的に負荷が大きいこと」(50.5%)でした。また「長期的な休みが取りづらいこと」(43.6%)、「突発的な休みが取りづらいこと」(40.5%)と有事の際に休みをとることが難しい現状の職場環境も、介護と仕事の両立の不安要素となっているようです。
介護のことを職場に「相談しづらい」が4割。相談しづらい理由最多は「プライベートなことを職場で開示したくない」。また「前例がない」も3割

介護と仕事の両立への不安として「休みが取りづらい」「業務を代わってくれる人がいない」などが挙げられていました。介護に際して、休みを取得する、あるいは人員配置を変えてもらうためには職場への相談が必要です。
もし親の介護をすることになり仕事に影響が出る場合、上司または人事・総務部に相談しやすいかを尋ねたところ、「相談しやすい」、「まあまあ相談しやすい」の合計は41.3%だったものの、「少し相談しづらい」、「相談しづらい」の合計も41.5%と同程度の結果となりました。まだまだ介護のことを相談しやすい職場ばかりではないということがわかります。

また、「少し相談しづらい」、「相談しづらい」と回答した人にその理由を尋ねたところ最も多かったのは「プライベートなことを職場で開示したくないから」(42.3%)でした。次いで「上司や人事・総務に理解がなさそうだから」(36.1%)、「前例がないから」(32.6%)と続きます。
今回の育児・介護休業法改正には、企業側に「自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供」や「 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知」が求められています。企業側が自社の従業員の介護休業の取得事例を周知しさらに利用促進を働きかけていければ、従業員側も前例があることを知り、介護のことを職場に相談し、制度に頼っていくことは当然という認識を持ちやすくなると考えられます。
介護と仕事の両立を考えて親を介護施設に入居させることに前向きな人は半数を超える。一方で入居させたくない理由に、金銭的理由や「同居、近居での介護」への志向が

介護と仕事の両立を考えて親を介護施設に入居させたいと思うかを尋ねたところ、「思う」、「まあまあ思う」の合計が53.0%と半数を超える結果となりました。

一方で「それほど思わない」、「思わない」の合計も21.2%となり、入居させたいと思わない理由で最も多かったのは「金銭的に難しいと思うから」で44.0%でした。施設介護は在宅介護サービスよりも費用がかかるものですが、公的施設である特別養護老人ホームの場合は比較的安く利用できるため、そうした情報提供を行き届かせることも重要です。
また「できれば同居、近居で面倒を見た方が良いと思うから」も同じく44.0%でした。親に介護が必要になった場合に自身が住み替えて同居、あるいは近居を選択する方は一般的に多いものです。背景には「親の介護は子がするもの」といった考えが依然として根強い可能性があります。
■ 調査概要
調査期間:2025年3月7日~2025年3月8日
調査主体:株式会社LIFULL senior
調査対象:65歳以上の親を持ち、企業に雇用されて就業している40歳以上の男女547名
■ 「LIFULL 介護」編集長 小菅秀樹(こすげひでき)のコメント

2025年4月の育児・介護休業法改正により、企業には仕事と介護の両立支援が求められます。介護は突然はじまり、家族がおこなう手続きや支援内容も時間とともに変化するため、職場全体の理解が不可欠です。
特に介護未経験の管理職は、従業員が直面する負担や不安を十分に理解できていない場合が多いため、初期に必要な手続きや、介護の段階ごとの変化を学び、適切に対応できるようになることが重要です。
また、介護休業や短時間勤務、在宅勤務などの制度を整えている企業もありますが、実際には利用しづらいケースも少なくありません。従業員が「制度の存在を知らなかった」「職場の雰囲気的に利用しづらい」と感じないよう、社内研修や説明会での周知徹底が必要です。ただし、単に働き方の選択肢を増やせばよいわけではなく、従業員が状況に応じて制度を活用できる環境整備が大切です。突発的な対応が必要な場面では、在宅勤務だけでなく、半日休暇や時間単位の休暇を柔軟に取得できる仕組みを整える。また、長期間に及ぶ場合は、短時間勤務やフレックスタイム制に加え仕事の役割を調整するなど、負担を軽減する工夫も必要です。さらに、介護研修や相談窓口の設置、外部機関との連携を進め、安心して相談できる体制を整えることも重要です。そして何より、経営者が「仕事と介護の両立に全力で対応する」と宣言することが、職場全体の意識改革につながり、制度の実効性を高めるでしょう。
■ 株式会社LIFULL senior について
「老後の不安をゼロにする」をビジョンに掲げ、ヒトとテクノロジーの力で、超高齢社会の課題を解決するさまざまな事業を展開しています。主な事業として、老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL 介護」、遺品整理業者検索サービス「みんなの遺品整理」、介護施設向け買い物代行業務支援サービス「買い物コネクト」があり、今後も高齢者や関わる人々が抱える不安や課題に向き合って事業を拡大していきます。
■ 株式会社LIFULL senior 概要
会社名:株式会社LIFULL senior(ライフル シニア)
所在地:東京都千代田区麹町1丁目4−4
代表取締役:泉 雅人
設立:2015年7月1日
事業内容:
老人ホーム検索サイト『LIFULL 介護』の運営
https://kaigo.homes.co.jp/
遺品整理業者検索サイト『みんなの遺品整理』の運営
https://m-ihinseiri.jp/
介護施設向け買い物代行支援サービス『買い物コネクト』の運営
https://lp.kaimonoc.jp/
自治体向け買い物弱者支援ツール『買い物コネクト』の運営
https://lp-g.kaimonoc.jp/
介護当事者一歩手前の世代に向け、介護や老後に関する最新情報や体験談を発信するウェブメディア『tayorini』(たよりに)の運営
https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/
■ 株式会社LIFULLについて (東証プライム:2120、URL:https://lifull.com/)
LIFULLは「あらゆるLIFEを、FULLに。」をコーポレートメッセージに掲げ、個人が抱える課題から、その先にある世の中の課題まで、安心と喜びをさまたげる社会課題を、事業を通して解決していくことを目指すソーシャルエンタープライズです。現在はグループとして不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」、空き家の再生を軸とした「LIFULL 地方創生」、シニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」など、この世界の一人ひとりの暮らし・人生が安心と喜びで満たされる社会の実現を目指し、さまざまな領域に事業拡大しています。
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公開日:2025.03.23
