副作用が少なくて効果が高い薬をつくれるゲノム創薬
ゲノム情報のデータベースを活用
ゲノム創薬とは、コンピュータによるゲノム解析の情報を活用して、新しい薬をつくることです。まずは、コンピュータ上で病気の原因にタンパク質の情報を調べます。そして、そのタンパク質に結合する物質から薬の候補を探し出し、最も合った治療薬を選びます。この方法なら、遺伝子情報をくまなく調べたうえで、破壊したい細胞だけをねらう物質を見つけることができるので、一人ひとりに合う、治療効果が高く副作用の少ない薬をつくることができます。
現在、日本ではゲノム創薬でつくられた薬のうち、遺伝性網膜ジストロフィー、悪性神経膠、慢性動脈閉塞症、多発性骨髄腫、リンパ腫などの薬が承認されています。なかでも、脊髄性筋萎縮症の薬は、1億6700万円という値段が話題になりました。
世界では多くの新薬が開発されていますが、現時点で日本ではその70%以上が未承認の状態です。薬の承認に必要な臨床試験がなかなかできないことが理由の一つとされていますが、一方で、創薬につながる物質は次々に発見され、研究が進められています。それらが実用化されれば、それぞれの患者に合うオーダーメイドの医療も夢ではなくなるでしょう。より多くの人が気軽に利用できる日が待たれます。
原因の遺伝子を見つけて薬を開発
コンピュータ上でゲノム解析データを利用し、病気の原因となる遺伝子を見つけて、タンパク質の構造を再現。それらに作用する薬の候補を探し出す。
創薬の流れ
- ①…病気の原因になる遺伝子を突き止める
- ②…その遺伝子がつくるタンパク質の構造を再現する
- ③…②のタンパク質に作用する薬の候補を探し出す
- ④…治療薬を決める
- ⑤…臨床試験で効果を確認する
- ⑥…有効性、安全性の確認をして発売
それぞれの病気・体質に合った薬ができる
ゲノム創薬では、患者自身の遺伝子情報をもとにするため、副作用が少なく効果が高い薬をつくることができる。
ゲノム創薬のスピード感
これまでの創薬は、薬の候補になる物質の作用を調べるために、一つずつ試験をする必要があり、非常に時間がかかりました。ゲノム創薬は、あらかじめ病気に関係する遺伝子を特定し、それに対応する物質を見定めてから薬の開発にとりかかることができるので、開発期間は圧倒的に短くなります。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』
著:高橋祥子
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』は、生命科学の基本概念を分かりやすく解説した書籍です。生命科学は、生物の構造や機能、進化などを研究する学問ですが、専門的な知識が必要で、難しく感じることも多い分野です。しかし、この本では、豊富な図解やイラストを使い、専門用語や複雑な内容をわかりやすく噛み砕いて説明しています。
特に、DNA、遺伝子、進化、免疫など、私たちの体や生命現象に関わる重要なトピックを、科学的な視点から解説しつつ、日常生活に関連づけて説明しています。初心者でも理解できるように配慮されており、難解なテーマでも「なるほど」と納得できる構成になっています。この本は、生命科学に興味があるけれども専門的な知識がない方、または生物学を学んでいる学生など、幅広い読者におすすめです。
公開日:2024.10.11