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奥川恭伸の「体の柔軟性」への意識とは?

Text:大利実

右ひじ炎症の影響でキャンプは二軍スタートとなるも、順調な回復ぶりを見せる奥川恭伸(ヤクルト)。
課題ともいわれる「体の柔軟性」に関して、本人はどうとらえているのか。

奥川恭伸「セ界から世界へ」①(別タブで開きます)

■奥川恭伸「セ界から世界へ④投球フォーム」

基本的な投球フォームは、小学生のときから変わっていない。ステップ幅が狭く、重心
がやや高く、リリース後の左ヒザはやや突っ
張り気味。
メジャーリーガーっぽいフォーム
をしているのが特徴で、「左ヒザをもう少し
柔らかく使えれば」という声が元プロの評論
家から挙がることもある。本人はどう思って
いるのか。
「ヒザの使い方について、いろいろ指摘され
ているのは知っています。でも、今どうこう
できるものじゃないので。のちのち、い
ろんな方のアドバイスを聞いて、改善できれ
ばと思っています」

ーー自分としては"課題"と受け止めている?
「正直、ヒザが突っ張っていることが、悪い
ことかどうかわかっていません。意識してい
るのは、左の股関節に体重を乗せることで、
ヒザは気にしていません」

星稜では、主に荒山善宣コーチがピッチン
グ指導を担当している。高校2年生のとき、
荒山コーチからメジャーリーガーの写真を見
せてもらったことがあったという。
「たしか、クレイグ・キンブレル(カブス)
だったと思います。ほかにも何人か見せても
らって、自分のフォームでいいんだなと納得
できたところがありました」
そもそも、股関節が硬いことも関係してい
る。前屈では手が地面にぎりぎり着くぐらい
で、開脚や股割りも苦手だ。

「セ界から世界へ」①の冒頭で紹介した「奥川くんに聞く50のこと」
の中には、「ストレッチを毎日やっている」
と書いてあった。柔軟性を高めようとする意
識は当然ある一方で、こんな思いも持つ。
「最近はストレッチができていません。やった
り、やらなかったりで……、ちゃんとやらな
いといけないんですけど、正直どうなのかな
って。」
「柔らかくしたからといって、良いこと
があるのかなって。柔らかくなったことがな
いので、わからないんですよね。だから、ス
トレッチを続けられない。『これをやれば、
絶対によくなる!』というのが、自分の中で
見えないので続かないんです」
素直な感情を吐露した。柔らかいほうがい
いのは何となくわかるが、ピッチングがどう
変わるのかがわからない。

それでも、今のままの体のままでは通用し
ないことは十分に自覚している。
「体の強さという部分でも、まだまだ弱い。
たとえば、ストレートに関しても、全体的に
まだ高い。でも、今の体で低く狙って投げよ
うとすると、ボールが沈んでしまう。」
「それが
わかっているので、フォームでどうこうしよ
うとは思っていません。体ができていく中で、
フォームの重心も、ストレートの高さも、お
のずと下がっていくと思っています」
ピッチングを見ていても感じるが、非常に
クレバーである。「今の体でできること」に
主眼を置き、一つひとつ課題をクリアしてい
こうとしている。

次回、奥川恭伸「セ界から世界へ⑤佐々木朗希への意識」へ続く
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)

執筆:大利実(おおとし・みのる)
1977年生まれ、神奈川県出身。中学野球ライターの草分け的存在。『メルマガでしか読めない中学野球』を月3回配信している。出身地・神奈川の高校野球もライフワーク。『高校野球継投論』(竹書房)が好評発売中。

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