分類学を知るとわかる
ふだん食べる野菜には、植物の分類学を知ると、へぇーっと思えることが見えてきます。たとえば、ジャガイモ、ナス、トマトはよく食卓に登場する野菜です。名前も姿かたちも異なる野菜なのですが、じつは、これらは植物学的には、すべてナス目、ナス科、ナス属の野菜なのです。つまりこれらは親類なのです。
しかし、ナス目、ナス科、ナス属といわれても、ナスだけでほかの野菜はどこにいったの?と疑問を持たれたでしょう。じつはナス、ジャガイモ、トマトは、同じナス属の「種」名なのです。ふだん私たちが野菜や花の名前を口にするときは、この種名を使っているわけです。この種名は属名や科名と同じになることも多々あります。
どうしてこのような面倒なことをするのでしょうか。植物の分類方法には長い歴史があります。
植物学の父とされる古代ギリシアのテオプラストス(紀元前4世紀〜3世紀)は、その著作『植物誌』で、約500種の植物を分類し、現代の分類学の先駆けとなるような植物分類学を打ち立てました。
その後18世紀になって、やっと合理的で学問的な分類方法である二名法がスウェーデンのカール・フォン・リンネによって提唱されました。二名法は、生物の種の学名の付け方で、ラテン語を使い、属と種の名を並べます。属名は大文字で始め、種名は小文字で始めます。生物分類学の父といわれるリンネ以来、さまざま人によって分類方法が確立されてきました。
こうすることによって、姿かたちや名前を見てもどんな関係があるかわからない生物は、「属」名と「種」名がわかると、少なくとも近い種か遠い種なのかがわかります。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。
大ヒット「眠れなくなるほど面白い」図解シリーズに、【植物学】が登場。
色仕掛け、数学の応用など、生き残りをかけた植物のたくみな戦略を徹底解説。
図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。
読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。
「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」
「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」
「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」
「植物は数学を知っている?」
「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく紹介します。
公開日:2023.04.28