ボールを意図的に曲げる従来の方法
インテンショナルスライスやフックなど、ボールを意図的に曲げたいときは、フェース面を最終的な目標に対してスクエアにセットし、ボールを打ち出したい方向に体を向けて構えると教えられました。
「クラブを振った方向にボールが飛び出して、その軌道に対するフェースアングルによってボールの曲がりが決まる」という考え方です。
ティショットでフェアウエイをキープしたけれど、グリーン方向を狙うには前方の木がスタイミーになるために意図的にスライスやフックを打ちたいケースで、そんな打ち方を試したことのあるゴルファーもきっと多いことでしょう。
こうした従来の理論が正しいと信じられていたにもかかわらず、意に反してボールはフェースを向けた方向に飛び出して、前方の木にまともに当たってしまったなんて失敗の経験はありませんか? 少なからずとも私はあります。
フェースの向きで出球の方向がほぼ決まる
今まではクラブを振る方向にボールが飛ぶと考えられていたのが、ハイスピードカメラのスーパースローの映像によって、クラブによる多少の差はあるものの、ほぼボールはインパクトの瞬間のフェースアングルの方向に飛んでいくことがはっきりと実証されました。スイングの研究が進み、科学の力を借りたスイング分析によって、従来の理論が覆されたのです。
ですから過去の上級者たちは口では従来の理論を語り、自分は体とフィーリングで覚えて球筋を操っていたわけです。
小さいストロークでゆっくりしたスピードで振るパッティングも、インパクトのフェースの向き通りにボールが飛び出していきます。ストロークの軌道が右だろうと左だろうと、フェースが真っすぐならボールも真っすぐ転がります。フェースへの依存度がほぼ100パーセントというわけです。
速いスピードで振るドライバーやアイアンなどのショットではインパクトのフェースの向きに100パーセント飛び出しませんが、8~9割近い確率でフェースの向きの方向に飛び出すことが証明されたのです。
もうひとつ、こんなケースも考えてみましょう。フェアウエイの絶好のポジションからアイアンでフェードを打ちたいとします。
この場合も従来の理論であれば、フェース面をピンに真っすぐ向けて、肩や腰、スタンスなど体の全体をグリーンの左端付近に向けて構え、スタンスの向きに沿って振るのが基本と考えられていました。
でもそのやり方ではボールはピンの方向に飛び出し、左を向いたクラブパスに対してフェースアングルがターゲットを向いていることになりますから、右に大きく曲げてグリーンの右に外れてしまいます。
フェードを打ちたいなら、どのくらい右に曲げるかをまずイメージしましょう。たとえばグリーンの左端の方向に打ち出して15ヤードくらい右に曲げるとすれば、フェース面をグリーンの左端に向けます。フェースアングルとクラブパスの向きが同じでは左のグリーンエッジに真っすぐ飛んでいってしまいます。
そこでクラブパスをフェースアングルよりも少し左に向けるために、自分の体をグリーンの左端よりもさらに左に向けて構えるのが正解です。
【書誌情報】
『ゴルフは科学で上手くなる! 科学が明かすスイングの原則と上達法』
著者:/石井忍
時代の流れとともにクラブやボールなどの道具が進化してきたが、それに合わせるようにゴルフスイングの研究や分析も進んできた。本書の著者は、スイングをメカニズムの視点で考える「物理的運動」として理解し、それに「スポーツ的運動」の要素を加えることが大事と考えている。スイングを物理的視点から考えると多くの発見があり、スイングの本質に近づいてく。この本はスイングを型にはめて解説するだけのレッスン書ではなく、スイングを科学的に学びたい人に向けた教科書である。その上で正しい体のアクションを覚えれば、上達のキッカケづくりに必ず役立つ格好の一冊といえる。
公開日:2021.03.10