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みそ汁のお椀がテーブルの上を滑るのはナゼ?/摩擦とボイル–シャルルの法則【物理の話】

Text:長澤光晴

摩擦とボイル–シャルルの法則

熱いみそ汁を入れたお椀を、濡れたテーブルやお盆の上に置くと、なにかの拍子にスーッと滑るように動き出すことがあります。この現象には、摩擦とボイル‒シャルルの法則が関わっています。

摩擦とは、接触している2つの物体を接触している面(界面)に平行に動かそうとするときに、その場に留まろうとして働く抵抗力のことです。

みそ汁のお椀の底には円筒形の高台の足がついています。お椀を濡れたテーブルに乗せると、表面張力によって水はお椀の高台とテーブルの間にあるわずかな隙間を埋めてしまいます。この薄い水の層は、お椀の高台とテーブルが乾いているときよりも、摩擦を小さくする潤滑剤の役割をすると同時に、お椀の高台とテーブルの接触部分の間に密閉された空間をつくります。

また、お椀が熱ければ密閉空間に取り残された空気はあたためられて膨張しようとします。

ところが水の壁に阻まれているために、空気は外へ逃げることができません。

ボイル‒シャルルの法則によれば、密閉空間の体積が同じなら、空気の温度が上昇すると圧力が高まります。すると、空洞内の空気の圧力は大気圧よりも高くなります。

この状態では、みそ汁とお椀の重さを密閉空間内の空気が支えています。そのため、お椀の高台がテーブルを直接押す力はとても弱くなり、高台とテーブルとの間の摩擦が非常に小さくなるのです。

ですから、テーブルが少しでも傾いていれば、テーブルに平行な重力の成分によってお椀は低いほうへスーッと動くというわけです。

ただし、みそ汁が熱すぎると水の壁が壊れ、ぶくぶくと泡を立てながら空気は外へ逃げ出します。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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