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上野の「国立西洋美術館」が世界に誇るスゴさとは?【建築の話】

国立西洋美術館のピロティは市民のため?

上野の国立西洋美術館はル・コルヴィジェが設計した日本唯一の建築作品です。20世紀初頭までの美術館は、国家や王、貴族といった権力者が自らの権威を示す舞台でもありました。豪華な玄関、見上げるような立派な階段を持つ館内に、豊富なコレクションを展示し、威厳を表現することが重要だったのです。

しかし、ライトと並ぶ近代建築三大巨匠の一人に数えられるコルヴィジェがつくったのは、市民のため、作品のための美術館でした。

国立西洋美術館の外観を見ると、1階は柱が並び、上階の建物を支えるピロティ形式になっています。ピロティ内のガラス張りが入口になっており、玄関を意識することなく、自然に入っていく構造です。そこに美術館を権威つける象徴だった玄関や階段はありません。

市民に開かれた大きなホールに入ると作品が飾られており、来場者は作品を眺めながら、上階の展示空間につながるスロープを上っていきます。権力者の美術館から、市民の美術館へ。この建物にはそんなコルヴィジェの思いが込められているのです。

1930年代以降、コルヴィジェは世界各地で多くの美術館を計画しました。そこには一貫したコンセプトがあります。それは、収蔵品の増加に応じ、展示空間が拡張するというアイデアです。国立西洋美術館では、カタツムリが渦を巻くように、展示空間が螺旋状に連なり続ける構造を目指しました。

市民のニーズに応じて展示が増えていく。まさに市民のため、作品のために計画された美術館といえるでしょう。

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク

【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク

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