木材は育った環境と同じようにつかうのが原則
世界の住宅は、伝統的に石、土、木の三つの素材でつくられてきました。日本で圧倒的に多いのは木造の家です。日本列島で樹木が豊富に採れたのがその一因ですが、土や石が乏しかったわけではありません。家を建てるのに木を選んだのには、それ以外の理由があるのです。
その一つが湿度を保つ調湿機能です。杉の柱1本は、ビール大瓶(633ミリリットル)半分から1本分の水分を吸収する能力があるといわれています。6畳間に柱は6本程度つかわれるので、かなりの量になるでしょう。木は、蒸し暑い日本の夏に相応しい素材だったのです。
土にも調湿機能がありますが、構造上、土壁の窓は小さくなります。木で柱と梁を組み立てれば、大きく窓を開け、風を入れることもできるのです。この調湿機能は「木が呼吸する」とも表現されます。木は木材になっても生きており、呼吸しているのです。その能力を最大限生かすコツは、育ったとおりにつかうことです。
たとえば柱につかう場合、木元(樹木の根元側のこと。先側は木末)を下にします。梁としてつかうときは、木材の背(樹木の太陽があたる側)を太陽が当たる上に向けるのが大原則です。
木と木を継ぐ場合も同じで、植物の導管をつなげるように、木末と木元を合わせて継ぎます。樹木は自分から場所を移動することはありません。芽を出した環境に合わせ、育ちます。材木としても、その特性は健在です。風呂場や台所には谷間の湿地で育った木、リビングには日当りのよい尾根の木が適しています。
古くから「地元の木は地元でつかえ」と伝えられてきたのも、木の能力をいかす知恵です。
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以上の方には「図解 建築の話」は大変おすすめな本です。
「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
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「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
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【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
身近な建物が楽しくなる。ナゾとギモンを一挙解決!屋根の形は、どうやって決まるの? 正面だけが西洋風の看板建築って、どんな構造? うだつが上がらないの、うだつって何? 日本の建築をテーマに、さまざまな建築のナゾを楽しく解き明かします。古民家から、お寺、神社、城、庭、代表的な近・現代建築まで、建築家ならではの視点で、建築物の見方、楽しみ方を図解します。理系の知識がなくても大丈夫。私たちの生活や伝統美など、暮らしの文化に根ざした日本建築のスゴさと面白さがわかります。建築士しか書けない精緻なイラストを満載。60項目で楽しむ建築エンターテインメント本です。
公開日:2022.10.22