32歳ごろ布教を始め、最期は十字架刑に
『新約聖書(しんやくせいしょ)』の『福音書(ふくいんしょ)』によれば、イエスは紀元前4年ごろ、いまのイスラエルのガリラヤ地方のナザレに生まれ、紀元30年ごろ没したとされています。父はヨセフ、母はマリアで、兄弟姉妹たちがいたようです。イエスはユダヤ人であり、ユダヤ教の礼拝堂であるシナゴーグでの礼拝に参列し、*律法(りっぽう)を学びました。
父の仕事を継いで大工となり、母マリアや兄弟を養いましたが、32歳のころヨルダン川のほとりでユダヤ教の宣教師ヨハネから洗礼を受けます。その後、荒野で修行を積み、教えを説き始めて弟子たちが集まります。布教活動の地は主にガリラヤですが、エルサレムでも何度か行なっています。
イエスの活動は、「主(しゅ)の御霊(みたま)が私には宿っている。貧しい人々に神の言葉を伝えるために、私は神から遣わされた」という言葉に集約されます。この教えは、選民思想(せんみんしそう=選ばれた者だけが救われるという考え)では救われない、虐(しいた)げられた貧しいユダヤ人から絶大な支持を得ました。
また、病人を癒(いや)したり、死者を蘇(よみがえ)らせたりするなどの奇跡をなしたといわれています。
ところが、ユダヤ教の律法を厳守する道徳的なパリサイ派の指導者などから、イエスは危険人物とみなされることになります。そして、弟子であったイスカリオテのユダに裏切られ、皇帝に対する反逆の罪で囚われることになり、ゴルゴダの丘で十字架刑に処せられたのです。
イエスの実質的な布教活動は2年程度で、処刑されたのは34~35歳くらいだったといわれています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の宗教』
監修:星川啓慈 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1956年生まれ。1984年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得退学。1990年、日本宗教学会賞受賞。現在、大正大学文学部教授。博士(文学)。専門は宗教学・宗教哲学。主な著書に、『言語ゲームとしての宗教』(勁草書房、1997年)、『宗教と〈他〉なるもの』(春秋社、2011年)、『宗教哲学論考』(明石書店、2017年)、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』(法藏館、2020年)など。
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公開日:2022.04.01
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