「良いカッコしようとする」とメンタルが乱れる! 一軍と二軍のキャンプの違いとは何か? 巨人、高梨雄平投手の連載日記【ナシさんのアリな話 鉄腕奪取】第13回!

第13回 2年連続、キャンプを二軍スタート。調整の実態とは?

ラブすぽ読者のみなさん、読売ジャイアンツの高梨雄平です。今季も開幕が近づいてきましたが、僕は宮崎での約1カ月のキャンプも終わり、2025年の開幕に向けてしっかりと調整する日々を過ごしています。

「宮崎での1カ月」と書きましたが、僕は昨季に続いて2年連続で春季キャンプを「二軍」で過ごしました。読者のみなさん、ファンのみなさんの中には「そんなんで調整は大丈夫か?」と心配してくれる人もいるかもしれないですけど、「二軍キャンプ」にもいいところは沢山あるんです。

ひとつは、選手たちを取り囲む「目」の数が圧倒的に少ないこと。ご存じの通り、ジャイアンツは日本一の人気球団です。春季キャンプと言えども、メディアの数、ファンの数は相当なもの。たしかに、プロ野球選手としてはある種の緊張感や周囲からの目線による適度なプレッシャーは必要だと思いますが、自分と向き合いたい、自分のペースで調整したい春季キャンプという時期に関して言えば、そういった「目」が少ないほうが、やりたいこと、取り組むべきことに集中しやすいというメリットもあります。その意味では、今季もしっかりと自分に向き合って、やるべきことをやれた実りのあるキャンプになったんじゃないかなと、実感しています。

あと、キャンプ中に宿泊する一軍のホテルも素晴らしいホテルなのですが、一軍のホテルよりも二軍のホテルの温泉のほうが、僕は好きです(笑)。もちろん、それを理由にして「二軍キャンプ」を過ごしたわけではないですよ!ただ、1カ月間という日々をリラックスして過ごすためにも、実はそういう細かなところも大事だったりするんです。

逆にデメリットを挙げるとすれば、先ほど書いた「緊張感」の不足かもしれません。前回のコラムにも書きましたが「一軍」と「二軍」では同じような出力でも体の張りが全然違います。シーズンに入れば当然、僕の仕事は「一軍のマウンド」でなければいけないので、開幕までにはその環境に順応しなければいけない。もちろん、二軍で投げるときも今持っている最大限のパフォーマンスを出せるように心がけていますが、脳の仕組みなのか、やっぱり「違う」というのが現実だったりもします。

その一方で、「二軍だからこそ感じられる緊張感」も、実はあるんです。たとえば一軍にいたら、岡本和真がいたり、大勢がいたり、チームには僕よりもメディアからの注目度が高い選手がゴロゴロいます。ファンの方の注目も当然ですけど「今季の巨人の4番はどうだ?」「抑えの大勢の調子は?」という面に向きますよね。

ただ、二軍ではちょっと違う。若手投手の中に僕がいると、「一軍で実績のある投手」という目で見られる。特に今季から複数年契約を結んで、年俸も上がったので、これまでよりも「一軍でバリバリやってる投手」という見られ方をするようになった気がしています。若い選手に対しても、別に「俺が手本になってやる」みたいなことは全然思っていないんですけど、やっぱりどこかで「変な姿は見せられない」という緊張感はあった気がします。

「やって当たり前」という視線は、実は意外と厄介なモノです。たとえば2月22日の今季初実戦。結果は1回を投げて無失点、3奪三振。数字だけを見たらほぼ完璧です。ただ、内情はちょっと違って……。あの日、ブルペンではすごく調子が良かったんですけど、なぜかいつもよりメンタルが乱れていたんです。初の実戦とは言え、いつもはこんなことはないよな……。そう思って、一度頭の中を整理したんですけど、そこで気付いたんですよね。

「あぁ、俺、良いカッコしようとしてる」って。

一軍で実績を挙げて、複数年契約してもらったうえでの今季初実戦。二軍の練習試合ということもあって、自分でも気付かないうちにプレッシャーみたいなモノがあったんだと思います。僕自身、ふだんはそういうことをほとんど思わないタイプだったのでビックリしました。でも、初の実戦でそれに気付けたことは、良いことなんじゃないかなと思っています。

さぁ、開幕まであと少し!みなさんも今季の「高梨雄平」をぜひお楽しみに!

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