治・勇・強を保持して不敗の態勢を続ける
開戦前は整然と統率されていた軍隊でも乱戦になれば陣形も崩れ、編成や指令に混乱が生じる。開戦前には意気盛んだった兵士らも戦況不利となれば臆病風に吹かれる。開戦前は強大な軍隊でもひとたび劣勢に陥れば、たちまち戦力が低下する。
これらの事態を避けるためには、指揮官に臨機応変の才と強い自覚が求められる。そして、それを備えた指揮官の軍は開戦前の状態が乱戦に突入しても維持されるのである。
強い軍隊は、最悪の事態を回避するどころか、非常に高い確率で勝利を呼び込むことが可能で、その要諦は「治」「勇」「強」の三つにある。
ここでいう「治」は軍隊に対するしっかりとした統制、「勇」は戦闘に突入する際の勢い、「強」は強力な陣形を意味しており、およそ部隊編成や指揮命令系統がしっかりしている軍隊は、糸がもつれ合うような混戦状態になっても決して混乱することはない。
水が渦巻くように絶えず陣形が変化しても、部隊編成そのものが破綻することもなければ、敗北を喫することもない。
そのためリーダーは、絶えず「治」「勇」「強」に気を配り、それらが「乱」(=混乱)、 「怯」(=弱気)、「弱」(=敗北の態勢)へと転じぬよう最善を尽くせというのが、孫子の教えである。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.18