樹齢5000年を超える世界一の長寿マツの秘密
アメリカのカリフォルニアにあるインヨー国立森林公園のホワイトマウンテンの3000mの斜面は、アルカリ性で白く荒涼とし、年間降水量もごくわずかという乾燥した傾斜地で、植物にはとても厳しい環境です。
斜面沿いにはまるで枯れたような木々があちらこちらに不気味に立ちすくんでいます。なかには本当に枯れて死んだ木もありますが、鋭いトゲのような緑の葉がついている木もあり、生きています。これは針葉樹でマツ科の植物です。現地ではブリッスル・コーンパイン(和名イガゴヨウマツ)とよばれ、枯れ木に見えても生きている木は、どれも樹齢4000年を超えています。
このなかに樹齢5000年以上という、ピラミッドより古い木があります。これは2013年に、気候変動や年輪測定、考古学研究などで定評のあるアリゾナ大学の年輪研究所の研究者が測定した結果です。測定方法は、年輪測定でよく使われるクロス・デーティング法によっています。こうして1本の木として最高樹齢のマツ科の木が発見されました。
樹齢千年以上の樹木は世界に何本あるのでしょうか。年輪測定などの方法で樹齢が確立されている木は、数十本あります。そのどれもが樹齢1500年以上で最高樹齢は5000年を超えます。ほかに樹齢千年を超えるといわれる木はやはり数十本知られていますが、多くが推定年代で、しっかりと樹齢が確立された木々ではありません。
さらに幹が枯れても、根から新芽が出てクローン成長して幹(寿命数百年)になるという木々が世界にはあります。これらは実に1万年から8万年にわたって生きてきましたが、クローン成長した部分の合計年数で、一本の木の樹齢ではありません。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。
大ヒット「眠れなくなるほど面白い」図解シリーズに、【植物学】が登場。
色仕掛け、数学の応用など、生き残りをかけた植物のたくみな戦略を徹底解説。
図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。
読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。
「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」
「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」
「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」
「植物は数学を知っている?」
「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく紹介します。
公開日:2023.04.04