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コピー機はどうしてコピーができるのか?【物理の話】

Text:長澤光晴

静電気の応用

空気が乾燥すると、服を脱ぐときにバチバチと音をたてることがあります。

これらは静電気の仕業です。やっかいもの扱いされがちな静電気ですが、コピー機やプリンターにとっては必要なものなのです。

まず、コピー機が原稿を読み取るしくみを考えましょう。

紙が白く見えるのは、紙が光をよく反射するからです。逆に、ペンで書いた字が黒く見えるのは、字の部分が光をあまり反射しないからです。これを応用すると、原稿に強い光をあてて、反射光の強弱から、紙のどこにどれくらいの濃さで字が書かれているかを読み取ることができます。

つぎに、読み取った情報を別の紙の上に再現するしくみです。

プラスチックのように電流を流しにくいものを絶縁体、金属のように電流を流しやすいものを導体と呼びます。絶縁体は静電気の元である電荷を表面に溜めることができますが、導体は溜められません。このことは、プラスチックの下敷きでは髪の毛を逆立てることができるのに、金属の板ではできないことからもわかります。

コピー機の要である感光体は、ふだんは絶縁体なのですが、光が当てられると導体になる性質を持っています。

真っ暗な部屋においた感光体の表面にまんべんなく電荷を溜めてから、一部分に強い光をあてるとどうなるでしょうか?

光があたって導体になった部分からは電荷が流れ去り、光があたらなかった部分には電荷が残ります。そこへ炭素が主成分の黒くて細かい粉(トナー)を吹きかけると、静電誘電によってトナーは電荷のあるところへ引き寄せられます。この状態の感光体に紙を押しつけて粉を紙面に移せば、光があたらなかった部分だけが黒く転写されます。

実際のコピー機やプリンターでは、まず、タングステンの細線などを使ったコロナ放電と呼ばれる方法で感光体表面にマイナスの電荷を均一に分布させます。

つぎに、原稿を読み取った情報を元に感光体の上へ原稿と左右反対にトナーがつくように、感光体へ強い光をあてます。トナーを吹きかけて紙に転写して、紙を加熱するなどしてトナーを強固に密着させるとコピーは完了です。

感光体を掃除してきれいにすれば、再び同様の行程を繰り返すことができます。

レーザープリンターやLEDプリンターも基本的には同じしくみです。違うのは、読み取った原稿の情報ではなく、コンピューターからの情報を元に精密に制御されたレーザー光線やLEDの光を感光体へあてて、紙に印字をする点です。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 物理の話』
著者:長澤光晴  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1967年生まれ。東京理科大学理工学部物理学科卒業。北海道大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了。東京電機大学工学部基礎教育センター・工学部環境化学科准教授、フランス国立極低温研究所(CRTBT)客員研究員(2001年)を経て、現在は東京電機大学工学部自然科学系列・工学研究科物質工学専攻教授。博士(理学)。日本物理学会所属。著書に『面白いほどよくわかる物理』(日本文芸社)がある。


水洗トイレ・冷蔵庫からジェトコースター、スケート、虹、オーロラ、飛行機、人工衛星・GPSまで身の回りにある物や現象のしくみが面白いほどよくわかる!文系の人でも理解できるよう、とにかくわかりやすく、またとにかく図を使ってうまく説明しました! 本書で扱ったテーマは、身の回りにそれとなくある物や現象です。それらの仕組みを知らなくても生きてはいけますが、知っていればなかなか楽しく暮らしていける、そんなものばかりです。物理の醍醐味は、いろいろな現象を少数の法則や定理そして少しの仮定で取り扱うことができるところにあると思います。

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