布がとても貴重だった時代、防寒や補強の手段として刺し子は生まれました。やがて装飾的な要素が加わり、多彩な模様が登場するように。それこそがまさに用の美。
『色であそぶ糸であそぶ 刺し子の愉しみ』から、刺し子におすすめの布と糸選びについてご紹介します。
布について
刺し子に適しているのは、針通りのよい平織りの布。ふきんに仕立てる場合は晒し木綿を使うのが一般的ですが、吸水性に富んだリネンもおすすめです。印つけが面倒な一目刺しは、市販のガイド入り刺し子布を利用すると気軽に楽しめます。
a 刺し子用木綿
ふきん1枚分にカットされた刺し子用の布。針通りがよく、初心者におすすめです。
左:「さらしもめん」約34×70㎝、中・右:「刺し子もめん」約33×70㎝、全9色/オリムパス製絲
b ガイド入り刺し子布
「一目刺しは印つけが面倒」という方には、ガイド入り刺し子布がおすすめ。
洗えば印が消えるので、仕上がりもきれい。
c 晒(さら)し木綿
手ぬぐいやおむつなどに適した、やわらかく吸水性に富んだ平織りの木綿布。
布幅をそのまま生かし、2枚重ねにして使います。1反(約34㎝幅×10m)で1000円前後と値段も手ごろ。
d リネン
吸水性に富み、ナチュラルな風合いのリネンは、小物づくりに最適。
針通りのよい、適度な厚さのものを選びましょう。
e 木綿布
色数が豊富な木綿布は、刺し子とも好相性。
「あづみ野木綿・カット布」約54×45㎝、全30色/オリムパス製絲
水通しと地直しについて
リネンなど縮みやすい布は、後からゆがみが生じないように水通しと地直しをします。一晩水に浸けて軽く脱水し、半乾きまで陰干し。タテ糸とヨコ糸が直角に交わるように整えながら、裏から低温でアイロンをかけます。
布について
布と同素材の糸を使うのが基本。ふっくら仕上げたいときは太めの糸を、繊細に仕上げたいときは細い糸を。模様の大きさや布の厚さによって糸を選びます。刺し子糸のほか、手縫い糸や25番刺しゅう糸など、好みの糸で刺しても。
a〜h 刺し子糸
綿100%の刺し子専用糸。甘撚りの細い木綿糸を何本か合わせたもので、ふっくらと美しく刺し上がります。メーカーによって色味や風合いが異なるので、好みに合わせて選びましょう。単色のほかに、ぼかし(段染め)やミックスなどの多色づかいの糸も各社から発売されています。
a 1束20m、単色全29色/オリムパス製絲
b <細>小かせ 1束40m、全20色/ダルマ(横田)
c <合太>小かせ 1束40m、全24色/ダルマ(横田)
d 1束約85m、単色全20色/ホビーラホビーレ
e 1束145m、単色全51色/本舗 飛騨さしこ
f 細糸 1束約370m、単色全25色/小鳥屋商店
g <細>カード巻 40m、全19色/ダルマ(横田)
h <合太>カード巻 30m、全9色/ダルマ(横田)
i 手縫い糸
布なじみのよい綿100%の手縫い糸がおすすめ。おもにふきんを縫い合わせる際に使いますが(P.54参照)、模様を刺すときに使用すれば、より繊細な仕上がりに。
【左】「ダルマ家庭糸<細口>」100m、全56色、【右】「ダルマ家庭糸<太口>」100m、全9色/横田
j 25番刺しゅう糸
6本の細い糸をゆるく撚り合せた綿100%の糸で、フランス刺しゅうなどに使われます。色数が豊富なので、好みの色で刺したいときにおすすめ。2本どり、3本どり、6本どりというふうに、図案や布に合わせて糸の本数を調整して使います。1束8m、単色は全500色/DMC
【書誌情報】
『刺し子の愉しみ』
日本文芸社編
撮影:蜂巣文香・天野憲仁(株式会社日本文芸社)
彩り豊かな刺し子の作品集。
人気の一目刺しを中心に、伝統文様や創作模様、くぐり刺しなどを多色づかいで。白い布に一色刺し、多色刺し、色布に一色刺し、多色刺し、端切れをパッチワークして一色刺しなど、さまざまな色づかいを楽しめます。
手軽に楽しめるように、小さめのサイズのふきんも提案。コースターやくるみボタンなど、仕立ての簡単な作品や、パッチワークを組み合わせた袋ものなどを紹介。
【好評既刊】
『刺し子 こぎん刺し 刺しゅうのデザイン』
ザ・ハレーションズ編
関連サイト
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公開日:2024.03.29