電気が動力となり車輪が回転
日本の鉄道車両で、最も普及しているのは電気を動力とする電車です。かつてはディーゼルエンジンで動くディーゼルカーや、石炭を燃やしたときの熱で水蒸気を発生させて動力とする蒸気機関車が主流でした。電車の利点は、ディーゼルカーや蒸気機関車と異なり燃料を補給する必要がないということです。電車に電気を供給するための設備をつくるには莫大な費用がかかりますが、燃料を運ぶ手間が省けるため、高頻度で運行する場合にはエネルギー効率に優れるといえます。
電気を動力とする電車において、動かすときのポイントとなるのがモーターと車輪です。電線を通って送られてきた電気が、電車内部のモーターに伝わることで車輪が回転。そうすると、レールと回転する車輪の間で摩擦が起こり、その摩擦が電車を進ませるための動力となります。またモーターに電気を伝えるために、制御装置というものをはさみます。これは電流の向きや電圧を変化させる装置で、悪天候時や年数が経ってレールにサビが生じたときでも、変わらず通常通りの滑走をできるように調整してくれるという役割があります。電車は効率のよさだけでなく、安全性も担保されている優れた乗り物なのです。
電車のしくみ
架線
変電所から架線に電気が流れる。
制御装置
電流の向きや電圧を調整し、モーターに伝える。
パンタグラフ
電気を車体に取り入れるための装置。常に車体と架線をつなげるよう、ばねの力を利用している。
架線を流れている電気をパンタグラフが車体へ取り込み、制御装置で電流を調整してからモーターへ送ることで、安定した運転ができます。
モーターの回転とレールの摩擦で前に進んでいる
回転エネルギー
電気の力でモーターが回り、車輪が回転。
摩擦力
車輪とレールの間に摩擦の力が発生する。
直進エネルギー
摩擦の力が直進する運動エネルギーに変化し、電車は前進。
電車は、車輪の回転するエネルギーが摩擦力により直進するエネルギーに変化することで、前に進んでいます。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』綿貫 渉
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 鉄道の話』
綿貫 渉 著
通勤・通学、旅行・おでかけ…私たちは普段何気なく電車や駅を利用していますが、なぜ安全に時間通りに運行できるのか、遅延や事故・トラブルの際はどう対処しているのか、意外と知らないことも多い鉄道の話。本書では、今さら聞けない基本的なしくみから、知るほど面白い鉄道の歴史まで、図解やイラスト付きでわかりやすく解説します。
公開日:2023.07.25