【野球ごはん②】ごはんの量について≪令和版≫

Text:上村香久子

「めし」は、たくさん食べる方がいいの?
小・中学生の選手、保護者から一番多い相談内容は、「ご飯は、どのくらいの量を食べればいいのですか?」です。
以前、中学1年生選手から「指導者から1回の食事でご飯800gを食べるように言われます。僕は、ご飯800gを食べたら、おかずが食べられません。工夫できる方法はありますか?」と衝撃的な質問を受けました。
体格や練習量にもよりますが、一般的に中学1年生の選手が、1食あたりのごはん800gは多すぎます。ご飯は、体を動かすエネルギー源となる炭水化物を含んでいます。ご飯を食べる量が減ると、練習中にエネルギー切れを起こしやすくなります。練習中にエネルギー切れが起こると、最後まで練習についていけない、集中力が落ちる、ケガなど練習の成果を得にくくなります。ご飯をしっかり食べて欲しいですが、食べ過ぎはよくありません。成長に合わせてご飯の量を調整しましよう。

ジュニア期のエネルギー量について

小中学生は、(図1)のように成長の個人差が大きいです。図1の「身長発育速度曲線」は、年齢と骨の発育を比較した曲線です。体の成長と同じように消化吸収する力の成長も個人差があります。多すぎる食事量は、かえって内臓に負担をかけ、下痢、おう吐など体調不良を起こしやすくなります。時々、保護者から「体の大きなあの子を見習ってもっと多く食べて欲しい」と言われます。しかし、体の成長には個人差がありますので、体の成長に合わせて、食事量を増やしていきたいです。私がジュニア期の保護者にお願いしていることは、「他の子どもたちと比較しすぎないでください。となりの芝生は青いんです」と話し、周りの子供たちと比べ過ぎないように注意を促しています。

(表1)は、私がエネルギー量によって、目安にしている1食あたりのごはんの量です。例えば、2600~2900kcalの1食あたりのごはんの量は200~300gになります。体が大きくなれば、必要なエネルギー量も増えます。体の成長、体調、練習量などに合わせてご飯の量を調整してください。
私は数年前に他国の栄養士へ「食が細いジュニア選手は、どのような食事のとり方の工夫がありますか?」と質問したことがあります。彼女は「子供たちは、必要な量を体の感覚でわかっています。子供たちは必要であれば、その分の食事量はとるはず。子供たちをよく観察することが大切です」と言われました。もしかすると、子供たちに実際に必要な食事量と、大人が思う食事量に差があるかも知れません。子供たちの日々の活動量、体調、食事量などを観察することが大切と考えます。
 
 
ご飯が食べづらい時はどうすればいい?
ご飯は、体を動かすエネルギー源となる炭水化物を多く含んでいます。毎日の練習をやりきるために必要な栄養素です。しかし、選手の中には、食が細い、疲れがたまり食欲が落ちるなど、ごはんが食べづらい日もあると思います。そのような時は、ご飯にこだわらず、他の食品に替えてみましょう。ご飯と同じように炭水化物を多く含む食品は、パン、うどんなどのめん類、もち、いも類、バナナ、シリアルなどがあります。

(表2)にご飯100g(コンビニおにぎり約1個分)と同じくらいのエネルギー、炭水化物を含む食品と量を紹介しました。
例えば、写真のようにうどんなどめん類を組み合わせる。食パンの上にしゃぶしゃぶ用のうすい餅をのせた餅トースト、シリアルやカットフルーツを加えたヨーグルト、バナナを使ったミックスジュースなどは、目先が変わり食べやすくなりますよ。食べやすいものを組み合わせてください。

以前、選手から「朝食にご飯は食べづらいけれど、ラーメンなら食べられます。食べていいですか?」と質問を受けました。私は、「食べられるなら。いわゆる“朝ラー(朝食ラーメン)”いいですよ」と話したら、選手たちの表情が「いいの!」と明るくなりました。
選手は必要なご飯の量を「手ばかり」で覚えてはいかがでしょうか。例えば、自分の手でおにぎりを作る。自分の手でおにぎりを作ると、どのくらいの大きさ、何個必要か分かると思います。また、お茶碗によそうご飯の量が分かれば、合宿、遠征先のホテル・旅館の食事で自分に必要なご飯の量を準備することができるようになりますよ。

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