SPORTS COLUMN
- スポーツの話題を毎日更新 -

バッテリーに信頼が不可欠な理由とは

Text:遠藤玲奈

北海道日本ハムファイターズ黒羽根利規捕手・吉川光夫投手トークショーレポート

30回を超えるラブすぽトーク開催の中で、投手と捕手、いわゆるバッテリーのお二人でご登壇いただいたのは、今回が初めてでした。
吉川光夫投手の投球を黒羽根利規選手が試合で受けたことは、まだないそうです。それでも、さすがバッテリーだなと感心させられるやりとりが随所にちりばめられていました。
DJケチャップさんのリクエストで、捕手が投手にサインを出すタイミングを再現してくださった時のこと。返球を受けた後、少しマウンドの周りを歩いて、と吉川光夫投手の投球間のルーティンを黒羽根利規選手が説明しました。先ほど書いたように、実戦で組んだことのないバッテリーです。それにもかかわらず、黒羽根利規選手は吉川光夫投手の動きが頭に入っているのです。
どの投手も気持ちよく投げられるように気を配る、そのために常に観察を怠らない。捕手にはそのような高度な要求がなされます。

果たすべき仕事がたくさんある捕手ですが、吉川光夫投手がいちばん投げやすいのは、後逸しない捕手だそうです。
走者がいない場合は、捕手が球を少し捕り損ねても、その打席に限っていえば直接の問題はありません。ですが、逸らされたという印象が投手の頭にあると、走者がいても同様ではと考えてしまい、思いきった投球をしにくくなります。低めの変化球を捕手が捕れずに、相手に得点を与えてしまうかもしれないと思うと、安全な場所を狙うしかなくなり、結果的に甘い球になって痛打されるおそれがあるということです。
投手も捕手も、試合展開に応じてさまざまなことを考えながらプレーしています。どちらか一方の思考や技術だけが優れていても、打者を抑えることはできません。2人が信頼しあって、18.44mをはさんで対話しながら投球を組み立てていく。その積み重ねで、試合に勝利することができるのです。

いいシーズンについてのお二人のお話も印象に残りました。
黒羽根利規選手は今シーズンの終わりをいい形で迎えられたそうです。オープン戦で立て続けに盗塁を許してしまったことがあり、それからしばらく二軍の試合でもなかなか調子が上がりませんでした。うまく盗塁を刺す勘を取り戻すのにしばらく時間がかかってしまったのです。ですが、夏頃から徐々に上向きになり、シーズンの最後の試合は、盗塁阻止のアウトによる勝利で締めくくることができました。その時のことを話す表情から、来季への意気込みが感じられました。
吉川光夫投手は、パ・リーグMVPを獲得した2012年シーズンのことを語ってくださいました。前年は二軍での登板が多かったのですが、その好成績が認められ、2012年は期待を背負っての起用となりました。一軍でも、二軍で好調だった時と同じように投げられている感覚があったそうです。大部分の選手にとって、一軍と二軍の間の壁は高いものであるはずです。が、その時の吉川光夫投手にはそうではありませんでした。周りの状況が少々変わっても、自分のやり方を維持できる。それが調子のいい時なのかもしれません。

どんな練習をしたら野球選手になれますか、という小さな男の子からの質問に、どんな選手になりたいかを考える、と黒羽根利規選手は答えました。
投げ方や打ち方でない答えは、男の子にとっては意外で少し難しかったかもしれません。ですが、野球選手ってかっこいい、と今まで漠然と思っていたのが、どうしたらかっこよくなれるんだろう、と、わくわくしながら考え始めていることでしょう。
お二人ご自身もまた、今後どんな選手になっていきたいかと常に考えているのでしょう。どんな理想を描き、実現していくのか。楽しみにして、開幕を待ちます。  

『ラブすぽ』ライター:遠藤玲奈
池田高校のやまびこ打線全盛期に徳島に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。選手としての経験はないが、独自の方法で野球の奥深さを追究する。特に気になるポジションは捕手。フルマラソンの自己ベストは3時間31分。