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プロ野球選手が放つ驚くほど回転する変化球の原理とは?【すごい物理の話】

Text:望月修

ボールのスピードと変化の仕組み

プロ野球投手の投げる回転のかかった変化球はびっくりするほどキレがあるといいます。でも、無回転でもボールが変化するってどういうこと?そんな回転しない変化球について探ってみましょう。縫い目を無視して、つるりとしたボールが回転していない場合を考えてみます。ボールが空中を飛ぶとき、ボールにかかる抵抗Dは球速Uの二乗に比例します。比例定数CDは抵抗係数です。硬式ボールの場合、球速72〜146㎞/h(20〜40.5m/s)では抵抗係数が一定でCD=0・45。この数値に硬式ボールの直径74㎜を当てはめると、球速範囲の抵抗Dは、D=0・46〜1.9Nとなり、これが球速を減速させるブレーキとなるのです。

ピッチャーマウンドとホームベース間の距離は18・44mです。仮に球速72㎞/hで投げたとき、ベース上でどのくらいの速度に減速するのかを先の抵抗値から計算すると67㎞/hとなります。減速率は92・5%です。146㎞/hのボールでは、125㎞/hに減速されるので、減速率は85・3%です。つまり、初速が速いほどブレーキのかかり方が大きいということを表しています。

バッターからは、球速が遅いとピッチャーの手元を離れたときの速度のままで飛んでくるように見え、球速が速いとベース上では予測とは違って、突然スピードが遅くなったように感じるのです。球速が146㎞/hを超えると抵抗係数は急激に小さくなり、168㎞/hではCD=0・35となって22%も減少します。これはボール後方の流れの様子が激変するためです。

また、160㎞/hの球速ではCD=0・38です。このときのブレーキ力は1・9Nとなり、球速は139㎞/hに減速します。減速率は87%です。仮にCDが先のように0・45だとすると、ブレーキが強く掛かり(2・3N)、減速率は84%となるはずですが、球速が146㎞/hを超えると、ボールのスピードは予測より落ちずに飛んでくるため、バッターのタイミングが外れてしまうのです。

ただし、ボールの縫い目がどの位置にあるかで、こうした現象が、どんな球速で起こるのかの事情が変わってきます。そのため、フォークボールやナックルボールなどのようにボールがベース上に来るまでに1/4回転、もしくは半回転するくらいゆるゆるの回転を与えると、速度や軌道が不規則に変化し、どこに飛んでくるのか予測がつかない変化球となります。いわゆる「魔球」ですね。

ボールのスピードと変化【眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

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