動悸
責任のある職についている人や、何かを我慢して続けていて慢性的なストレスを感じている人など、心のパワーを使い果たし、心労がかさむと動悸を生じることがあります。心が虚してくると心陽虚に、そしてそれがすすむと気血両虚に、さらに進行すると気虚・陰虚となっていきます。ただし、動悸には心臓の疾患が潜んでいる場合もあるので内科受診が必要です。
その他 水気上逆による動悸
心が疲れて心陽虚になった状態
処方:苓桂朮甘湯
心の働きが弱まっている
日頃から心のパワーを使いすぎていると、虚したところに水がたまって心陽虚になり、耳鳴りやめまいをともなうこともあります。このタイプは、利水作用のある苓桂朮甘湯を用います。精神症状を落ち着かせる効果も期待できます。
体質からみる気血両虚よる動悸
脾の気虚のある人が心労を重ねるとなりやすい
処方:帰脾湯
慢性的な心労が原因
長期間にわたって無理を続け、心労が慢性化してくると、ちょっとした刺激で動悸が起きやすくなります。もともと脾の気虚や血虚の体質があると、より症状が出やすく、帰脾湯を用いて不安や緊張をやわらげます。
体質からみる気陰両虚による動悸
気と津液が不足した心労が悪化した状態
処方:炙甘草湯
心因性だけでなく心疾患の可能性も
心労がさらにすすむと、気虚と陰虚となり、精神活動の基盤である心のダメージが強くなります。この段階まですすんでくると、心臓の基礎疾患をもっている場合は心労はできるだけ控えたほうがよいでしょう。
気と津液の不足には、補気補陰の作用をもつ炙甘草湯を用います。
養生・セルフケア
過ごし方
ストレスを心で受けとめてしまうと、心が疲れて動悸が起こりますが、肝で受けるとイライラし、肺で受けるとせきが出ます。また脾で受けるとうつうつと考え込んでしまい、腎で受けると恐怖を感じます。
このようにストレスは五臓のすべてに悪影響をおよぼすので、自分にあったストレス解消法を見つけて、日頃からため込まないように心がけましょう。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
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公開日:2024.12.19