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初代神武天皇の即位【眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話】

Text:谷口雅博

初代神武天皇の即位

天下の政治をとり仕切る

【オオモノヌシノカミの子を娶る】

イワレビコノミコトは宇陀から進んで忍坂(おさか)の大室(おおむろや)(大きな岩穴)にたどり着きました。そこには尾を生やした*土雲(つちぐも)、八十建(やそたける)が待ちかまえ、うなり声をあげています。

相手が意気盛んなのを見て、イワレビコノミコトは力攻めではなく、計略を施すことにしました。

ご馳走を整え、八十建たちにふるまい、一人ずつに接待係をつけます。そして、接待係は全員、刀を帯び、合図の歌を聞いたら、いっせいに斬りかかるよう命じたのです。この計略によって八十建は皆殺しになりました。

イワレビコノミコトはついで、兄のイツセノミコトの仇(かたき)であるトミビコを討ち、さらには、その地の土豪(どごう)の兄弟であった兄師木(えしき)・弟師木(おとしき)の兄弟をも討ち滅ぼしました。

「天つ神の御子が天降ったとうかがい、あとを追ってまいりました」

イワレビコノミコトが連戦の疲れを歌にして癒やしていると、ニギハヤヒノミコト(邇芸速日の命)が現れて、そういいました。ニギハヤヒノミコトはイワレビコノミコトよりも先に大和に入り、トミビコを従えていたのです。ニギハヤヒノミコトは自分が天つ神の子である証拠の品を献上すると、臣従することを誓います

このようにして、荒ぶる神を服従させ、服従を拒否する者を追い払い、確固たる地盤を得ることに成功すると、イワレビコノミコトは畝火(うねび)の白檮原(かしはら)に宮殿を築き、天下の政治をとり仕切りました。

初代神武(じんむ)天皇の誕生です。

神武天皇は東征に出る前に、日向 (鹿児島県加世田市周辺)の地でアヒラヒメ(阿比良比売)を娶(めと)り、二人の子をもうけていました。しかし、もっと皇后にふさわしい乙女が欲しいと探しはじめました。

そんなとき、オオクメノミコトが神の御子と呼ばれる娘がいるとの情報を寄せて、こういいました。

「娘の母は、名をセヤダタラヒメ(勢夜陀多良比売)といい、類希(たぐいまれ)なる美女でございます。この美女にすっかり魅了されたのが、美和(みわ)のオオモノヌシノカミ(大物主の神)でした。オオモノヌシノカミは、赤く塗った矢に化けると、厠(かわや)の溝を通って流れくだり、その美女が大便をしている最中に陰部を突いたのです。

こうして生まれたのがホトタタライススキヒメノミコト(富登多多良伊湏湏岐比売の命)です」

富登(陰部)という名を嫌い、のちにヒメタタライスケヨリヒメ(比売多多良伊湏気余理比売、以下、イスケヨリヒメ)と改めました。

こうして神武天皇はオオモノヌシノカミの娘であるイスケヨリヒメを皇后とし、上から順にヒコヤイノミコト(日子八井の命)、カムヤイミミノミコト(神八井耳の命)、カムヌナカワミミノミコト(神沼河耳の命)の三人の男の子をもうけました。

ところで、神武天皇が亡くなると、即位前にもうけた子、タギシミミノミコト (多芸志美美の命)は、神武天皇の皇后であったイスケヨリヒメを自分の妻としました。

さらに、自分が皇位を継ごうと企み、異母弟三人の殺害を計画します。それを知ったイスケヨリヒメは悩んだ末に、歌に託し、御子たちに命の危機を知らせました。

母からの知らせを受けた御子たちは、先手を打ってタギシミミノミコトを討つことにしました。

まず 、兄のカムヤイミミノミコトが、武器を手にタギシミミノミコトの屋敷に忍び込みました。しかし、いざというときになって手足の震えが止まらず、殺すことができません。

その様子を見た末弟のカムヌナカワミミノミコトは、兄から武器をもらい受けると屋敷に忍び込みました。

そして、カムヌナカワミミノミコトは躊躇(ちゅうちょ)することなく、タギシミミノミコトの息の根をとめました。

このような経緯から、カムヤイミミノミコトは次のように宣言しました。

「兄であれども、敵を殺せなかった私は天皇となるべきではない。勇敢にやり遂げることができたあなたこそが天下を治めるべきだ。私は、祭祀(さいし)を司る者としてあなたにお仕えしよう」

こうして、第二代の綏靖(すいぜい)天皇にはカムヌナカワミミノミコトが即位しました

神武天皇の享年は137歳。

陵墓は畝火(うねび)の北方の白檮(かし)の尾根のあたりにあります。

* 土雲は、先住民。八十建は、多くのどう猛な人という意味。

初代神武天皇の即位

兄は怯えたが、弟は敵を討ちとった。

初代神武天皇の即位

イワレビコノミコトは、畝火の白檮原の地に宮殿を築き、神武天皇として即位した。

古事記伝承の地をめぐる神武天皇陵

初代神武天皇の墓は円丘で周囲は約100m、高さ5.5mの広い植え込みがあり、幅約16mの周濠をめぐらせています。

神武天皇陵

神武天皇陵

奈良県橿原(かしはら)市にある大和三山の一つ畝傍山の北東の麓、橿原神宮に北接する神武天皇陵。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』監修:谷口雅博

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記の話』
監修:谷口雅博 日本文芸社刊


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